3-1 mRNAワクチンの有効性について教えてください。

2022/02/03

 日本で承認されたファイザー・ビオンテック社ワクチン(商品名「コミナティ筋注」)の臨床試験1)と、モデルナ社ワクチンの臨床試験2)では、症状が出る新型コロナウイルスの感染症を抑える効果(発症予防効果)は、約95%ととても高いことがわかっています。これは、ワクチンを受けた人は、ワクチンを受けなかった人と比べて、発症する確率が95%減るということを意味します(図参照)。また、ファイザー・ビオンテック社のワクチンを受けた約60万人と、受けていない約60万人を比べたイスラエルの大規模な研究でも、ワクチン接種により発症する人が94%減り、重症化する人も92%減るという非常に高い有効性が報告されています3)更に、アメリカで実際にワクチンが接種され始めてから行われた研究では、無症状のものも含めた感染そのものを予防する効果が91%あることが確認されています4)。このように、mRNAワクチンは従来のウイルス(武漢株)に対して、発症や重症化を予防するだけでなく、人から人への感染を防ぎ、流行を抑える効果が確認されていました。

 B.1.617.2変異ウイルス(デルタ)については、mRNAワクチンは若干効果が減弱することがわかっています。イギリスでファイザー・ビオンテック社ワクチンの有効性を調べた研究では、デルタに対する発症予防効果が88.0%であったと報告されています5)。更に、無症状のものも含めた感染そのものを予防する効果は66%にまで低下することが確認されています4)
 11月WHOに「懸念される変異体(VOC)」に指定されたB.1.1.529変異ウイルス(オミクロン)に対するワクチンの効果に関しては、2022年1月現在研究が続けられている段階です。数々の実験室の研究で、今までの変異ウイルスに比べてワクチンを接種した人の中和抗体の効果が低下することが報告されています。またイギリスからの報告では、mRNAワクチン2回接種後のオミクロンに対する発症予防効果は他の変異ウイルスに比べて低下することが推測されています。しかし、3回目の接種を行うことで、オミクロンに対しても十分な効果が得られることが確認されています。(「Q3-6. オミクロン変異ウイルスについて詳しく教えて下さい。mRNAワクチンはオミクロンにも効果がありますか?」の項目参照)。

 複数の研究で、2回目を接種してから数か月間経過すると、発症予防効果が徐々に低下してくることが報告されています6,7,8)。これに加えて、デルタやオミクロンといった変異ウイルスの流行によりワクチンの効果が更に低下したため、CDCは3回目のワクチン接種を開始しました9)。日本においても、2021年12月1日より3回目の接種が開始されています2回目の接種完了から原則8か月、年齢や時期によっては6~7か月以上間隔を開けて行う、3回目の接種が2021年12月1日に開始されました。3回目のワクチン接種により重症化を予防したり、入院・死亡を防ぐなど、減弱したワクチンの効果が再び高められることがわかっています(「Q10-2. 3回目の接種は受けた方が良いのでしょうか?」の項目参照)。

 

  1. N Engl J Med. 2020;383:2603-2615
  2. N Engl J Med. 2021;384:403-416
  3. N Engl J Med. 2021;384:1412-1423.
  4. MMWR Morb Mortal Wkly Rep. 2021;70:1167-1169.
  5. N Engl J Med. 2021;385:585-594
  6. Nat Med. 2021;27:2127-2135.
  7. BMJ. 2021;375:e067873.
  8. N Engl J Med. 2021; 385:e85.
  9. CDC. Interim Clinical Considerations for Use of COVID-19 Vaccines Currently Approved or Authorized in the United States

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