3-6 オミクロン変異ウイルスについて教えて下さい。mRNAワクチンはオミクロンにも効果がありますか?

2022/02/03

 オミクロン変異ウイルスは、WHOによって2021年11月26日に「懸念される変異体(Variant of Concern)」に指定されたウイルスです1)。これまでに見つかった変異ウイルスに比べてスパイクタンパク質の部位に約30箇所と数多くの変異があることが特徴です。2021年11月に南アフリカで最初に検出されましたが、元々いつどこで生まれたのかは不明です。2022年2月現在、日本を含む世界中で新規症例の多くがオミクロンによるものです。 

 オミクロンの ①伝播性(人から人へどれぐらいうつりやすいか)、②病毒性(症状のある感染や、重症な感染をどれぐらい起こしやすいか)、③免疫逃避性(ワクチンを接種した人や、一度感染した人がどれくらい感染しやすいか)については、多くの国で研究が行われており、少しずつ明らかになってきました。

 まず、オミクロンはデルタよりも伝播性が高い(人から人へうつりやすい)と推測されています。例えば、南アフリカからの速報では、オミクロンはデルタに比べて伝播性が高いと報告されています2)。またイギリスの研究では、感染者が家庭内で感染を広げる確率は、デルタ(10.1%)よりもオミクロン(13.6%)の方が高いことが報告されています3)。しかし、オミクロンの伝播性を知るためには、他の変異ウイルス(主にデルタ)に比べてどれだけ感染の広がりが速いかだけでなく、免疫逃避(ワクチンを接種した人や、一度感染した人がどれだけ感染しやすいか)や世代時間(ある人が感染してから次の人に感染させるまでの期間)の影響も考慮する必要があるため、正確に推定することが難しいのが現状です。

 病毒性(重症化のしやすさ)に関しては、「オミクロンはデルタよりも入院するリスクが低い」という報告が複数あります4-7)。イギリスの研究では、オミクロンはデルタに比べて、救急外来の受診ないし入院が必要になるリスクは約半分であり、入院が必要になるリスクは約1/3だったことが報告されています4)。他にも、米国の報告では、オミクロンはデルタに比べて入院リスクは約半分、集中治療入室リスクは約26%、死亡するリスクは約9%と推計されています7)。しかし、オミクロンの病毒性がデルタに比べてどれだけ低下しているのかを知るためには、感染者の年齢や基礎疾患、既感染者の割合、ワクチンの接種歴、接種してからの期間などを考慮して比べる必要があり、今後のデータの蓄積を待つ必要があります。

 免疫逃避(ワクチンの効果・再感染のリスク)に関しては、複数の実験室の研究で、抗体療法やワクチン接種による中和抗体が、オミクロンに対して効きにくくなっていることが報告されています8-10)。また臨床研究でも、mRNAワクチンのオミクロンに対する発症予防効果は、デルタに比べて低下することが報告されています。これに加えて、ワクチンの効果は時間とともに低下していきますが、ブースター接種後には、発症予防効果が6割以上に上がることが報告されています4,11,12)。重症感染を予防する効果については、mRNAワクチンやアストラゼネカ社のウイルスベクターワクチンを接種して6か月以降経過すると、入院を防ぐ効果が約44%にまで低下するものの、ブースター接種後には8割以上に上がることが報告されています12)

 

  1. 国立感染症研究所. SARS-CoV-2 の変異株 B.1.1.529 系統(オミクロン株)について(第5報).
  2. SOUTH AFRICAN COVID-19 MODELLING CONSORTIUM. Omicron Spread in South Africa. Growth, Transmissibility, & Immune Escape Estimates
  3. UK Health Security Agency. SARS-CoV-2 variants of concern and variants under investigation in England. Technical briefing 33.
  4. UK Health Security Agency. SARS-CoV-2 variants of concern and variants under investigation in England. Technical briefing: Update on hospitalisation and vaccine effectiveness for Omicron VOC-21NOV-01 (B.1.1.529)
  5. THE UNIVERSITY of EDINBURGH. Severity of Omicron variant of concern and vaccine effectiveness against symptomatic disease: national cohort with nested test negative design study in Scotland.
  6. Lancet. 2022;399:437-446.
  7. medRxiv. Clinical outcomes among patients infected with Omicron (B.1.1.529) SARS-CoV-2 variant in southern California
  8. Nature. 2021. doi: 10.1038/s41586-021-04389-z.
  9. medRxiv. SARS-CoV-2 Omicron has extensive but incomplete escape of Pfizer BNT162b2 elicited neutralization and requires ACE2 for infection.
  10. medRxiv. Reduced Neutralization of SARS-CoV-2 Omicron Variant by Vaccine Sera and Monoclonal Antibodies.
  11. N Eng J Med. 2021;NEJMc2119270.
  12. UK Health Security Agency. SARS-CoV-2 variants of concern and variants under investigation in England. Technical briefing 34.

ページトップへ