3-4 ワクチンの効果はどれくらい長く続きますか?

2022/02/03

 ワクチンを受けた後どのくらいの期間、免疫(B細胞による抗体の担う液性免疫やT細胞による細胞性免疫)が保たれるのかはまだはっきりとは分かっていません。モデルナ社ワクチンは、少なくとも6か月は中和抗体価が高いレベルで維持され1)、ファイザー・ビオンテック社のワクチンでは、接種後6か月時点(2021年3月までのデータ)でも91.3%の発症予防効果および96.7%の重症化予防効果が保たれていたことが報告されました2)。ファイザー・ビオンテック社のワクチンを接種した方を調べた研究では、長期にわたって抗体を作り続ける細胞(長期生存形質細胞)が骨髄にいることが報告され、より長期の免疫を獲得する人がいる可能性が示唆されています3)。また免疫は、中和抗体の量だけでなく、T細胞による感染細胞への直接的な作用なども関与しているため、抗体価が下がったから免疫がなくなってしまった、とも言えないことも考慮に入れる必要があります。

    しかしながら、ワクチン2回目接種直後と比較して、時間経過とともに血中の抗体価が徐々に低下し、感染予防効果・発症予防効果が低下していることもわかってきています。具体的には2021年前半以降デルタへの置き換わりが進んだ米国やカタール、英国などにおいて、ワクチンの感染予防効果が低下したことが報告されています4-7)  しかしワクチン接種による発症予防効果が減弱していたとしても、高い重症感染予防効果が確認されており、ワクチン接種はデルタに対して引き続き有効であると考えられています。

 米国 CDC は、こうしたことを受けて、高い予防効果を維持するために2回目の接種から8か月以降に、3回目の接種(ブースター接種といいます)を、2021年9月末に開始しました8)。なお米国では2021年8月から既に、最初のワクチン接種では十分な免疫ができにくい中等度から重度の免疫不全の方に3回目の追加接種が開始されています。詳しくは3回目接種に関する項目をご覧下さい。日本でも3回目のワクチン接種が、2回目接種後8か月以上経過した人を対象として開始されました。

 2021年11月に報告されて以降各国に広がり日本でも2021年末以降市中感染の拡大が確認されているオミクロン変異ウイルスについては、特に2回目接種後長期間経過した人でデルタよりも大きくワクチン効果が低下することが確認されています。詳しくはオミクロンに関する項目をご覧下さい

 

  1. N Engl J Med. 2021;384:2259-2261.
  2. N Engl J Med. 2021;385:1761-1773.
  3. Nature. 2021;596:109-113.
  4. MMWR Morb Mortal Wkly Rep. 2021;70:1306-1311.
  5. Nat Med. 2021;27:2136-2143.
  6. Med (N Y). 2022 Jan 14;3(1):28-41.e8. 
  7. N Engl J Med. 2022;386:340-350.
  8. CDC. Joint Statement from HHS Public Health and Medical Experts on COVID-19 Booster Shots 

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