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ワクチンQ&A:みなさんへ

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ワクチンの仕組み・成分

Q1-1 ワクチンにはどのような種類がありますか?

A

 一般に、ワクチンの種類は大きく分けて、

  1. 生ワクチン
  2. 不活化ワクチン
  3. 成分(組換えタンパクワクチン・サブユニットワクチンなど)
  4. ウイルスの設計図(遺伝情報)を用いたワクチン

などに分けられます。

 

  • 生ワクチン

 ウイルスや細菌などの病原体を弱め、病気を起こさないようにしたものです。接種すると、その病気に自然にかかった場合とほぼ同じように免疫がつくことが期待できます。ワクチンの成分自体が「感染」をおこします。

  • 不活化ワクチン

 感染する力をなくした(不活化という)病原体を用いるワクチンです。生ワクチンと違い感染しませんが、免疫の付き方は少し弱くなります。

  • 組換えタンパクワクチン・サブユニットワクチンなど

 病原体の成分・部品である「タンパク質」を投与するものです。

  • ウイルスの設計図(遺伝情報)を用いたワクチン:mRNA(メッセンジャーRNA)ワクチン、ベクターワクチン、DNAワクチン

 これらのワクチンでは、ウイルスの部品にあたるタンパク質の設計図(遺伝情報)や、遺伝情報をのせた運び屋(ベクター)を投与します。その設計図をもとに、ヒトの体の中(細胞)でウイルスのタンパク質の一部がつくられ、さらに、ヒトの細胞が自ら作ったそのタンパク質に対する免疫がつきます。

 

*ベクター:ワクチンに必要な遺伝情報などをヒトの細胞に運ぶために、運搬役として使われる、ヒトに対して病原性のないウイルスなどのこと。(例:病原性のないアデノウイルス)

 

新型コロナウイルスワクチンには以下のものがあります

 mRNAワクチン:ファイザー・ビオンテック社ワクチン、モデルナ社ワクチン

 ベクターワクチン:オックスフォード・アストラゼネカ社ワクチン、ジョンソン・エンド・ジョンソン(ヤンセンファーマ社)ワクチン、ロシア・スプートニクVワクチン等

 組換えタンパクワクチン:ノババックス社ワクチン

ワクチンの種類 ©こびナビ

Q1-2 mRNA(メッセンジャーRNA)ワクチンにはどのような成分が入っていますか?

A

新型コロナウイルスのmRNAワクチンは、ファイザー・ビオンテック社製、モデルナ社製いずれも次の3つの成分からできています。

 

 1. mRNA本体

 2. mRNAを包む脂(脂質ナノ粒子):脂質やポリエチレングリコール(PEG)など。RNAを安定化・保護しつつ細胞内まで届ける役目を担う

 3. 塩類と糖類、緩衝剤

 

 新しく開発されたワクチンというと、未知の成分がたくさん入っているように思うかも知れませんが、実は大きく分けてこの3つの成分でできています。これらの成分は、どれもこれまでにヒトの体に投与された経験があるものです。

 mRNAワクチンには、免疫反応をより良く起こすための成分(アジュバント)や、水銀を含む保存剤は一切含まれていません。

 また、主成分の核酸であるRNAは、実際の細胞を使わずに工場内で合成(in vitro の合成、IVTという)されているため、細胞の成分等が混入することも原理的にあり得ません。

 

 1. FDA. EMERGENCY USE AUTHORIZATION (EUA) OF THE PFIZER-BIONTECH COVID-19 VACCINE TO PREVENT CORONAVIRUS DISEASE 2019 (COVID-19) IN INDIVIDUALS 16 YEARS OF AGE AND OLDER

 2. FDA. EMERGENCY USE AUTHORIZATION (EUA) OF THE MODERNA COVID-19 VACCINE TO PREVENT CORONAVIRUS DISEASE 2019 (COVID-19) IN INDIVIDUALS 18 YEARS OF AGE AND OFDA.

 3. N Engl J Med. DOI: 10.1056/NEJMra2035343

Q1-3 mRNA(メッセンジャーRNA)ワクチンによりヒトの遺伝子(細胞内の染色体)に変化がおこる可能性はありますか?このワクチンは、「遺伝子組換え技術」なのでしょうか?

A

 もともとヒトの細胞の中にはたくさんのmRNAがあり、これが私たちの遺伝情報がしまってある「核」の中には入ってこられないようにする仕組みがあります。なので、ワクチンを使ってmRNAを注射しても、基本的にヒトの遺伝子(染色体・DNA)がある細胞の核の中に入り込むことはできません。また、ヒトの細胞にはRNAをDNAに変換(逆転写という)したり、そのDNAをDNAでできた染色体に組み込んだりするための酵素(インテグラーゼという)もないため、ヒトの遺伝子(染色体)に変化を起こすことはありません1)

遺伝子組換え技術とは、ある生物の遺伝子の一部を、他の生物の遺伝子に組み込むことで、新しい性質を与える技術のことです。上記の通り、今回の mRNA ワクチンが遺伝子に組み込まれるということはなく、ワクチンを作用させることについて、遺伝子組換え技術というものではありません。

 

  1. IDSA. Vaccines FAQ

 

Q1-4 ワクチンの成分であるmRNAは体内に残りますか?

A

 ワクチンの主成分である mRNA は細胞の中のタンパク質を合成する工場(リボソーム)で使われたあと、すぐに分解されてしまいます。さらに mRNA を元につくられたタンパク質も数週間以内には分解されるため、mRNAワクチンの成分が体の中に長く残ることはないと考えられています。

  1. IDSA. Vaccines FAQ
  2. Journal of Controlled Release Volume 217, 10 November 2015, Pages 345-351
  3. Clin Infect Dis. 2021 May 20:ciab465.

Q1-5 ワクチンの成分が「卵巣に蓄積する」と聞き、不安です。詳しく教えてください。

A

 ファイザー・ビオンテック社は、mRNAワクチンが接種後に体内でどのような分布をするか調べるため、ラットを使った実験を実施しています1)。ラットにmRNAワクチンを接種して48時間後まで観察した結果、mRNAワクチン の成分のほとんどは投与部位にとどまっていましたが、一部は肝臓にも分布していました。接種されたワクチンのうち、肝臓へは最大18%が分布していましたが、卵巣に分布したのは全体の0.1%以下でした。他の臓器でもワクチン成分はわずかに移行しており、脾臓(1.0%以下)や副腎(0.11%以下)でも確認されていますが、これらは肝臓と比べると微量です。これらの結果から、mRNAワクチンは卵巣にわずかに分布することはありえますが、長期間に「蓄積する」とは言えません。これまでの臨床試験や実用化後のデータからも、mRNAワクチンが卵巣に蓄積して生殖機能に影響を与えるとは考えられていません。

  1. PMDA SARS-CoV-2 mRNA Vaccine (BNT162, PF-07302048) 2.6.4 薬物動態試験の概要文

ワクチンの開発

Q2-1 どうしてワクチンがたった1年間でできたのか教えて下さい

A

 これまでは通常、数年~十数年以上かかっていたワクチンの開発が、今回は1年以内で行われたことに不安を覚える方も多くいると思いますが、今回のワクチンが開発から承認がこれほど速く進んだ理由はいくつもあります1-3)

理由1)2002-2003年に流行した重症急性呼吸器症候群(SARS)や2012年頃から地域的に流行する中東呼吸器症候群(MERS)の原因であるコロナウイルスのスパイクタンパク質は、今回の新型コロナウイルスにとてもよく似ています。このウイルスに関する研究が続けられていたため、今回のウイルスでも、どこをワクチンの標的にすれば良いのかすぐに判明しています。

理由2)遺伝子を調べる技術革新や、mRNAワクチンに関する長年の研究により、遺伝子配列がわかればすぐにワクチンを設計できる技術がありました。

理由3)いくつかの段階の動物実験や臨床試験を同時並行で行い、効率よく研究を進めることができたこと。

理由4)世界中で大きな流行(パンデミック)になったことにより大規模な臨床試験の対象となる人がたくさん確保できたこと。

理由5)米国政府などから、ワクチン開発のために大量の資金が投入されたこと。

理由6)最終的な臨床試験を終える前から審査を始め、結果がでればすぐに承認する準備をしていました。

 このように、様々な工夫がされていたことが、短期間で開発がされた理由です。

 これだけ早く承認されたので、安全性の評価が甘いのではないかと思われる方もいるかもしれません。しかし、mRNAワクチンの効果と安全性を評価する大規模な臨床試験(ファイザー・ビオンテック社は43,448人、モデルナ社は30,420人)は、従来のワクチンと比べても、規模が大きいものでした4,5)また、FDAの承認審査はYouTubeで生配信されるなど、有効性や安全性の検証は透明性の高い方法で行われました。

 

  1. Nature. 2021;589:16-18
  2. N Engl J Med. 2020;382:1969-73
  3. Moderna. Moderna Announces Progress in Prophylactic Vaccines Modality with CMV Vaccine Phase 2 Study Data Now Expected in Third Quarter 2020 and Expands Investment in This Core Modality with Three New Development Candidates
  4. N Engl J Med. 2020;383:2603-15
  5. N Engl J Med. 2021;384:403-16

mRNAワクチンの効果

Q3-1 mRNAワクチンの有効性について教えてください。

A

 日本で承認されたファイザー・ビオンテック社ワクチン(商品名「コミナティ筋注」)の臨床試験1)と、モデルナ社ワクチンの臨床試験2)では、症状が出る新型コロナウイルスの感染症を抑える効果(発症予防効果)は、約95%ととても高いことがわかっています。これは、ワクチンを受けた人の5%が感染し症状が出てしまうということではなく、ワクチンを受けなかった人と比べて、発症する確率が95%減るということを意味します(図参照)。ファイザー・ビオンテック社のワクチンを受けた約60万人と、受けていない約60万人を比べたイスラエルの大規模な研究でも、ワクチン接種により発症する人が94%も減り、重症化する人も92%減るという非常に高い有効性が報告されています3)また、その後のイスラエルの16歳以上の人口全体を対象とした観察研究によって、ファイザー・ビオンテック社のワクチンの二回目接種から7日以降では、ウイルスへの感染を95.3%抑制(特に無症状感染を91.5%抑制)し、COVID-19関連の入院を97.2%、重症化を97.5%、死亡を96.7%抑制したという効果が確認されています4)。なお、この研究の期間中、イスラエルで感染が確認された新型コロナウイルスの約95%は、英国で発見されたB.1.1.7変異ウイルス(アルファ)でした。

2021年8月時点で、日本で流行しているB.1.617.2変異ウイルス(デルタ)については、mRNA ワクチンは若干効果が減弱することがわかっているます。具体的には、イギリスでファイザー・ビオンテック社ワクチンの有効性を調べた研究では、デルタに対する発症予防効果が88.0%であったと報告されています。5)

 しかし、複数の研究で、2回目を接種してから数か月間経過すると、発症予防効果が徐々に低下してくる可能性が示唆されています6,7)。このことと、デルタウイルスの流行によりCDCはmRNAワクチンを2回接種してから8か月以降に、3回目のワクチンの提供を予定しています8)

 

  1. N Engl J Med. 2020;383:2603-2615
  2. N Engl J Med. 2021;384:403-416
  3. N Engl J Med. 2021 DOI: 10.1056/NEJMoa2101765
  4. Lancet. 2021; 397: 10287:1819-1829
  5. N Engl J Med. 2021;385:585-594
  6. Impact of delta on viral burden and vaccine effectiveness against new SARS-CoV-2 infections in the UK.
  7. medRxiv. Elapsed time since BNT162b2 vaccine and risk of SARS-CoV-2 infection in a large cohort. 
  8. CDC. Joint Statement from HHS Public Health and Medical Experts on COVID-19 Booster Shots 

Q3-2 重症化を防ぐ効果について教えてください。

A

 ファイザー・ビオンテック社ワクチンの第2/3相臨床試験では、ワクチン接種から約2ヶ月後までを調べた結果、重症となった人は、ワクチンを受けたグループでは1人であったのに対し、プラセボ(偽薬)のグループでは9人でした 1)。ワクチンのグループで重症となった人でも、入院までは必要ない状態でした2)。その後、同じ臨床試験の被験者をワクチン接種から約6か月後まで観察した結果、1回目の接種後、重症となった人はワクチンを接種したグループでは1人、プラセボのグループでは30人でした(有効性96.7%)3)。イスラエルで約60万人のワクチン接種者を解析した研究から、2回目の接種から7日以降では、COVID-19の重症感染を92%防ぐ効果が確認されています4)

 モデルナ社の mRNA ワクチンに関しても、大規模な臨床試験において、プラセボのグループで重症化した人が30人いましたが、ワクチンを受けたグループで重症となった人は1人もおらず、ワクチンによって重症化することも防げたことが示されています5)

 2021年8月時点で、日本で流行しているデルタ(B.1.617.2)変異ウイルスについても、mRNAワクチンは重症感染を予防する高い効果が維持されていることがわかっています。具体的には、イギリスでファイザー・ビオンテック社ワクチンの有効性を調べた研究では、重症感染を予防する効果が96.0%であったと推定されています6)

  1. N Engl J Med. 2020;383:2603-2615
  2. FDA. Vaccines and Related Biological Products Advisory Committee Meeting December 10, 2020
  3. medRxiv. Six Month Safety and Efficacy of the BNT162b2 mRNA COVID-19 Vaccine.
  4. N Engl J Med. 2021;February 24. doi: 10.1056/NEJMoa2101765
  5. N Engl J Med. 2021;384:403-416
  6. Public Health England. Effectiveness of COVID-19 vaccines against hospital admission with the Delta (B.1.617.2) variant.

Q3-3 ワクチンは無症状の感染を防いでくれますか?ワクチンの接種後に自分が感染してしまっても、他の人にうつしてしまう可能性は低くなりますか?

A

 ワクチンが、無症状の感染と他の人へうつすことを減らすことが複数の研究で明らかになってきています1)モデルナ社のワクチンの臨床試験では、1回目と2回目の接種前に一部の人にPCR検査を実施していて、2回目の接種の時に、無症状でPCRが陽性だった人がワクチン群の方が少なかった(ワクチン群14人 [0.1%] vs. プラセボ群38人 [0.3%])ことが分かっています2)ファイザー・ビオンテック社ワクチンに関しては、イスラエルで約60万人のワクチン接種者を解析した研究から、2回目の接種から7日以降では、無症状の感染を90%防ぐ効果が示唆されています3)。さらに、米国CDCの研究から、ファイザー・ビオンテック社およびモデルナ社のmRNAワクチンの接種によって、2回目のワクチン接種から14日以降では、無症状感染を含む90%感染を防ぐ効果が報告されています4)

 ワクチン接種を完了した人が感染してしまった場合(ブレイクスルー感染といいます)、その人からどれくらい他の人にうつす可能性が低くなるかについては、今調べられている段階です。ただし、ワクチンを受けた方は、新型コロナウイルスに感染しても、検査した時に測定されるウイルスの量が少ないことが分かっています5)。またイギリスの研究では、ワクチンを1回でも接種した人が感染した場合、接種していない人よりも、同居人に感染をうつす可能性が下がることが報告されています8)。これらの研究から、ワクチン接種者がもしウイルスに感染してしまっても、同居者へのウイルス伝播を抑える効果があることが期待されます。

 ただしこれらの知見はデルタ変異ウイルスの出現より前のデータが元になっており、デルタの無症状感染や他の人への感染性に対するワクチン効果についての情報は現時点では限られていることに注意が必要です。ワクチン接種者と未接種者とでは新型コロナウイルス感染症と診断された時のウイルス量が同等であったとする報告がある一方9)、ウイルス量の低下はワクチン接種者でより早かったという報告もあり10)デルタについての他の人への感染を予防する効果については更なる研究が行われています1)

 

  1. CDC. Science Brief: Background Rationale and Evidence for Public Health Recommendations for Fully Vaccinated People 
  2. https://www.cdc.gov/coronavirus/2019-ncov/more/fully-vaccinated-people.html
  3. FDA. mRNA-1273 Sponsor Briefing Document Addendum Vaccines and Related Biological Products Advisory Committee Meeting Date: 17 December 2020
  4. https://www.fda.gov/media/144453/download
  5. N Engl J Med. 2021;February 24. doi: 10.1056/NEJMoa2101765
  6. Interim Estimates of Vaccine Effectiveness of BNT162b2 and mRNA-1273 COVID-19 Vaccines in Preventing SARS-CoV-2 Infection Among Health Care Personnel, First Responders, and Other Essential and Frontline Workers — Eight U.S. Locations, December 2020–March 2021
  7. Nature Medicine . 2021; 27:790–792
  8. https://khub.net/documents/135939561/390853656/Impact+of+vaccination+on+household+transmission+of+SARS-COV-2+in+England.pdf/35bf4bb1-6ade-d3eb-a39e-9c9b25a8122a
  9. MMWR. 2021;70:1059-1062.
  10. medRxiv. Virological and serological kinetics of SARS-CoV-2 Delta variant vaccine-breakthrough infections: a multi-center cohort study

Q3-4 インフルエンザワクチンと比べて効果と安全性はどうなのでしょうか?

A

 インフルエンザワクチン(主に不活化ワクチン)の有効性は年によって幅がありますが、大体40-60%程度で1)、新型コロナウイルスのmRNAワクチンはこれよりも高い有効性があると確認されています2,3)

 ファイザー・ビオンテック社ワクチン、モデルナ社ワクチンは、インフルエンザのワクチンと同じような臨床試験をして、安全性がしっかりと確認されています。通常は数千人規模で安全性や効果を確認するところを、3-4万人とかなり大きな規模で研究が行われました。

 

  1. CDC. Seasonal Flu Vaccine Effectiveness Studies
  2. N Engl J Med. 2020;383:2603-15
  3. N Engl J Med. 2021;384:403-416

Q3-5 ワクチンの効果はどれくらい長く続きますか?3回目の追加接種の可能性についても教えて下さい。

A

 ワクチンを受けた後どのくらいの期間、免疫が保たれるのかはまだはっきりとは分かっていません。モデルナ社ワクチンは、少なくとも6か月は中和抗体が維持されることが分かっています1)。また、ファイザー・ビオンテック社のワクチンでは、接種後6か月時点(2021年3月までのデータ)でも91.2%の発症予防効果および96.7%の重症化予防効果が保たれていたことが、未査読のプレプリントとして報告されています2)。ファイザー・ビオンテック社のワクチンを接種した方を調べた研究では、長期にわたって抗体を作り続ける細胞(長期生存形質細胞)が骨髄にいることが報告され、より長期の免疫を獲得する人がいる可能性が示唆されています3)。また免疫は、中和抗体の量だけでなく、T細胞という免疫の細胞なども関与しているため、抗体が下がったから免疫がなくなってしまった、とも言えないことも考慮に入れる必要があります。

    しかしながら、ワクチン二回目接種直後と比較して、時間経過とともに血中の抗体価が徐々に低下していることもわかってきています。変異ウイルスデルタに対する効果の持続はまだ調べられている段階ですが、新規感染のウイルスがデルタに置き換わってきている米国やカタールにおいて、ワクチンの感染予防効果が低下してきていることが報告されています。4-6)  しかしワクチン接種による発症予防効果が減弱していたとしても、依然として高い重症感染予防効果が確認されており、ワクチン接種はデルタに対して引き続き有効であると考えられています。

 米国 CDC は抗体価が徐々に低下していくこと、ワクチンはデルタ変異ウイルスによる入院や死亡への効果は高く維持されるものの、軽症や中等度の感染に対する予防効果が落ちてきていることから、高い予防効果を維持するために2回目の接種から8か月以降に、3回目の追加投与(ブースター接種といいます)を、2021年9月20日以降に実施する方針としました7)。初期に投与された医療従事者、長期入所施設の入所者や介護スタッフ、高齢者が優先的に接種される予定です。(米国では、2021年8月から中等度から重度の免疫不全の方に3回目の追加接種が開始されています。)
 なお、2021年8月20日現在、日本では3回目のワクチン接種はまだ実施されていません。日本国内でも追加接種が必要となるかどうかは、日本政府および関連省庁で議論されています。

 

  1. N Engl J Med. DOI: 10.1056/NEJMc2103916.
  2. medRxiv. Six Month Safety and Efficacy of the BNT162b2 mRNA COVID-19 Vaccine.
  3. Nature. 2021;596:109–113.
  4. MMWR. ePub: 18 August 2021. DOI: http://dx.doi.org/10.15585/mmwr.mm7034e1
  5. medRxiv. BNT162b2 and mRNA-1273 COVID-19 vaccine effectiveness against the Delta (B.1.617.2) variant in Qatar
  6. medRxiv. Comparison of two highly-effective mRNA vaccines for COVID-19 during periods of Alpha and Delta variant prevalence
  7. CDC. Joint Statement from HHS Public Health and Medical Experts on COVID-19 Booster Shots 

Q3-6 変異したウイルスにmRNAワクチンは効きますか?

A

 変異ウイルスに対して、mRNA ワクチンの効果があるのかどうかについては、いくつかの報告結果が集まってきています。mRNA ワクチンを受けた人の血液にある抗体を調べたところ、特に南アフリカで問題となった B.1.351(ベータ)とブラジルで問題となっている P.1(ガンマ)を中和する力がやや低下していることが報告されています。しかし、効果が全くなくなるわけではなく、ある程度はワクチンによって発症を予防できるのではないかと考えられています1-3)

 カタールにおけるワクチン接種者約38万人の調査より、英国で見つかった B.1.1.7(アルファ)、南アフリカで見つかった B.1.351(ベータ)、という2種類の変異ウイルスに対して、ファイザー・ビオンテック社の mRNA ワクチンは、2回目接種から14日以降ではそれぞれ89.5%、75.0%の感染予防効果を示すことが報告されています4)。いずれの変異ウイルスに対しても、重症化や死亡を防ぐ効果は100%近いと判明しています。デルタウイルスに関しては次の項目をご覧下さい。

 もし今後、現在のワクチンが効かない変異ウイルスが出現しても、mRNA ワクチンであれば効果的なワクチンを迅速につくることが出来るといわれており、実際にファイザー・ビオンテック社とモデルナ社は変異ウイルスベータやデルタに対応したワクチンの開発や臨床試験を行っています。

 

 

  1. bioRxiv. mRNA-1273 vaccine induces neutralizing antibodies against spike mutants from global SARS-CoV-2 variants.external icon 
  2. bioRxiv. Neutralization of N501Y mutant SARS-CoV-2 by BNT162b2 vaccine-elicited mpseraexternal icon
  3. Cell Host & Microbe 29, 463–476
  4. N Engl J Med. 2021;May 5. doi :10.1056/NEJMc2104974

Q3-7 デルタ変異ウイルスについて詳しく教えて下さい。mRNAワクチンはデルタにも効果がありますか?

A

 変異ウイルスデルタ(B.1.617.2)はインドで2020年末に見つかった変異ウイルスで、2021年8月現在、各国で急速に感染を拡大させており、日本国内でも他の変異ウイルスを大きく上回る勢いで感染が拡大しています。様々な研究から、デルタの感染伝播性(他の人への移しやすさ)は従来のウイルスより大幅に強くなっていると推定されています1)。この仕組みはまだ分かっていないことも多いですが、従来のウイルスに比べて、感染者からのウイルスの排出量が多く、感染してからウイルスを排出するまでの期間が短いことが関与している可能性があります。2) 

 カナダやスコットランドの報告では、従来のウイルスに比べて重症化するリスクや入院するリスクが高いことが報告されています。1)

 デルタに対するワクチンの効果については、現在調べられている段階ですが、複数の研究で発症予防効果が若干減弱していることが分かってきています。例えば、英国のレポートではファイザー・ビオンテック社mRNAワクチンのワクチン2回接種後の発症予防効果は、アルファに対しては93.7%であったのに対し、デルタに対しては88.0%であったと報告されています3)。また、新規感染のウイルスがデルタに置き換わってきている米国やカタールにおいて、ワクチンの感染予防効果が低下してきていることが報告されています。4-6)  しかしワクチン接種による発症予防効果が減弱していたとしても、依然として高い重症感染予防効果が確認されており、ワクチン接種はデルタに対して引き続き有効であると考えられています1)

 デルタについての他の人への感染を予防する効果については現在調べられている段階です。ワクチン接種者と未接種者とでは新型コロナウイルス感染症と診断された時のウイルス量が同等であったとする報告がありますが7)、ウイルス量の低下はワクチン接種者でより早かったという報告があります8)

 デルタのような変異ウイルスから自分を守るためには、ワクチン接種はますます重要です。一方で、ワクチン接種が完了した方であっても、デルタに感染してしまう可能性はあるため、感染拡大傾向にある間はこれまで通り、3密の回避、マスクの着用、距離をとるなどの感染対策が重要です。

 

  1. US CDC, Delta Variant: What We Know About the Science
  2. ​​medRxiv. Viral infection and transmission in a large, well-traced outbreak caused by the SARS-CoV-2 Delta variant
  3. N Engl J Med. 2021; 385:585-594
  4. MMWR. ePub: 18 August 2021. DOI: http://dx.doi.org/10.15585/mmwr.mm7034e1
  5. medRxiv. BNT162b2 and mRNA-1273 COVID-19 vaccine effectiveness against the Delta (B.1.617.2) variant in Qatar
  6. medRxiv. Comparison of two highly-effective mRNA vaccines for COVID-19 during periods of Alpha and Delta variant prevalence
  7. MMWR. 2021;70:1059-1062.
  8. medRxiv, Virological and serological kinetics of SARS-CoV-2 Delta variant vaccine-breakthrough infections: a multi-center cohort study

 

mRNAワクチンの安全性

Q4-1 mRNAワクチンの安全性や副反応について教えてください。

A

 数万人規模の臨床試験と実地の投与後の検討から、mRNAワクチンは安全性の高いワクチンであることが分かっています。米国の臨床試験では、以下(図参照)のような副反応が確認されています。これらの反応は免疫反応がしっかりと起こっていることを示す症状でもあり(ただし、副反応がなかったからといって免疫がつかないわけではありません)、特に2回目の接種後や比較的若い人に多く現れます。多くの場合、 接種して3日以内に症状が出て、数日以内に治まります。 つらいときは市販等の解熱剤/痛み止めを使用しても問題ありません。 もし熱が出ても必要に応じて休めるように計画しましょう。

 これらの副反応以外には、アナフィラキシー(Q4-5)、遅発性の皮膚の炎症/コビッドアーム(Q4-6)、心筋炎や心膜炎(Q4-10)が確認されています。

 ワクチンでは、スパイクタンパク質というウイルスの一部分しか作られないので、ワクチンの成分によって新型コロナウイルスに感染することは原理的にありえません。

臨床試験で報告されたファイザー社ワクチン接種後、2回目接種後の副反応の頻度

 

  1. N Engl J Med. 2020;383:2603-2615
  2. N Engl J Med. 2021;384:403-416
  3. CDC. Ensuring the Safety of COVID_19 Vaccines in the United States 
  4. FDA. Vaccines and Related Biological Products Advisory Committee Meeting December 10, 2020 FDA Briefing Document Pfizer-BioNTech COVID-19 Vaccine 
  5. FDA. Vaccines and Related Biological Products Advisory Committee Meeting December 17, 2020 FDA Briefing Document Moderna COVID-19 Vaccine
  6. N Engl J Med. 2021; 384:1273-1277

Q4-2 日本人では副反応はどのくらい起こりますか?

A

 日本国内では2021年2月14日にファイザー社ワクチン「コミナティ筋注」が承認され、医療従事者などへの先行接種が開始されました。この先行接種された約2万人の医療従事者などを対象とした重点的調査の結果、注射したところの痛みが出た人の割合は91%、倦怠感が69%、疼痛が90%、発熱(37.5℃以上)が38%でした。ほとんどの方は解熱鎮痛剤などの内服なしまたは症状に応じて内服することで、日常生活には支障をきたしませんでした。

 COVID−19ワクチンモデルナ筋注の添付文書によりますと、日本人200例(ワクチンを打った人:150人、偽薬(プラセボ)として生理食塩水を打った人:50人)を対象に調査が行われ、2回目の接種後の注射したところの痛みが出た人の割合は85%、疲労が63%、筋肉痛が50%、頭痛が48%、発熱(38℃以上)が40%でした。副反応の大部分は、接種後1~2日以内に発現し、持続期間の中央値は1~3日でした。

  1. 新型コロナワクチンの投与開始初期の重点的調査(コホート調査)第10版(2021年7月7日)
  2. COVID−19ワクチンモデルナ筋注 添付文書

Q4-3 ワクチンを受けた後の発熱などの副反応は、どのような仕組みで起きるのでしょうか?

A

 これらの症状は、風邪やインフルエンザなどの感染症にかかったときの症状と似ています。

 第一に理解する必要があることとして、風邪をひいた時に出る熱は、一般にウイルス自体が引き起こすものではなく、免疫細胞が分泌する物質(サイトカインなどといいます)によって起こります。これは、平熱の37℃よりも、40℃近い温度の方が、ウイルスを排除するために免疫システムが働くのに有利だからではないかと考えられます。

 このため、病原体がからだに侵入したあと、最初期に出会う免疫細胞から色々な物質が分泌されます(からだ全体に警報が発令されるようなイメージです)。これが、脳にある体温を調節する部分に働きかけて、からだの設定温度を平熱から、38-40℃に変更しなおします。これによって体温が上がって、免疫系が病原体と有利に戦うことができるようになります。この仕組みと同じことが、ワクチン接種後にも起こっていると考えられています。

 局所の副反応としての接種部位の痛みや腫れなどについても、免疫が活発に働いている状態(炎症がおきている)を示しています。

 ですから、よく起こる副反応として知られているものは、ワクチンの本来の働き—免疫系に「練習試合をさせる」ことがきちんと起こっていることを示していると言えるでしょう。

 ただし、これが起こらなかったからといってワクチンが効いていないということではありませんので、その点にはご注意いただければと思います。

Q4-4 mRNAワクチンによって、何年も経ってから生じる副反応の可能性はありますか?

A

 一般的に、ワクチンの副反応(ワクチンにおける副作用のこと)は、生ワクチン以外ほとんどが接種をしてから6週間以内に起こることが知られています1)

 mRNAワクチンが、原理的に遺伝子に組み込まれないこと、比較的短時間でその成分が分解され、ワクチンによってできる蛋白質も長期に体に残らないこと等を考えると長期的な副反応の可能性は考えにくく、もし起こったとしても非常に稀であろうと考えられます。

 長期的な副反応については、世界中で厳重な監視がされており、今後も評価が続けられます。

 

  1. National Childhood Vaccine Injury Act: Vaccine Injury Table
  2. Emergency Use Authorization Overview and Considerations for COVID-19 Vaccines

Q4-5 mRNAワクチンによるアナフィラキシーについて詳しく教えて下さい。

A

 アナフィラキシーとは、皮膚・粘膜、肺、消化器、血管・心臓など、2つ以上の臓器にアレルギー症状が出ることです。例えば、じんましん、咳、息苦しさ、口や顔の腫れ、喉のイガイガ、吐き気、血圧の低下、などの症状があります。いろいろな薬や食べ物、虫刺され等でも、アレルギーやアナフィラキシーを起こす可能性があります。頻度としては、アメリカでは、ファイザー・ビオンテック社ワクチン100万回投与につき4.7回、モデルナ社ワクチン100万回投与につき2.5回と報告されています1)これはインフルエンザのワクチンでのアナフィラキシーの頻度(100万人に1.4人)よりやや多いと言えますが、他の薬に比べて特別多いというわけではありません。例えば、抗菌薬(抗生剤)では、約5000人に1人(100万人に200人)アナフィラキシーが起きる事があります。

 なお、日本ではmRNAワクチン接種後のアナフィラキシーの頻度が多いのではないかという報道がなされました。しかし、ワクチンの安全性評価に用いられるブライトン分類2)に基づいて評価し直すと半分以上は定義を満たさなかったこと、米国でも医療従事者は非医療従事者よりも頻度が多いとの報告もある3)ことから、日本で特別なことが起きているわけではないと考えられます。実際に、広く接種が進んできて、現在では上記とほとんど変わらない頻度になっています。

 アナフィラキシーが起きた場合は、アドレナリン(エピネフリン)という薬をすぐに筋肉注射するという確立した治療があります。アナフィラキシーは比較的若い人に多く、以前に別のものでアレルギーを起こしたことのある人が約8割でした。食べ物など、今回のワクチン以外のものにアナフィラキシーを起こしたことがある方は注意が必要で、接種後30分は接種会場で様子をみることが大切です4)30分以降でも、全身の蕁麻疹だけではなく、息苦しい、顔が腫れる、などの急速に進行するアナフィラキシーを示唆する症状が出た場合は、救急車を呼びましょう。

 

  1. JAMA. 2021.doi:10.1001/jama.2021.1967
  2. Vaccine. 2007;25:5675-5684.
  3. JAMA. 2021. doi:10.1001/jama.2021.3976
  4. 厚生労働省「新型コロナウイルス感染症に係る予防接種の実施に関する医療機関向け手引き(2.0版)」(令和3年2月24日)

Q4-6 mRNAワクチン接種後、遅れて起きる腕の赤み・腫れ(「モデルナアーム」や「コビッドアーム」)について教えて下さい。

A

 mRNAワクチン接種後、数日後から1週間後くらいに遅れて生じる接種した腕のかゆみや痛み、腫れや熱感、赤みを伴う遅発性の局所反応が報告されており、COVIDアーム(またはモデルナアーム)と呼ばれています1,2)。この反応は、T細胞という免疫細胞が反応することにより起こる免疫反応・炎症であると考えられています。

 ファイザー ・ビオンテック社ワクチンでも起こりますが、多くがモデルナ社のワクチンで報告されています3)

 頻度は低く(モデルナ社ワクチンの第3相臨床試験では1回目の接種後0.8%、2回目の接種後0.2%4)。日本の報告ではモデルナ接種1回目接種8日目以降も発赤とかゆみが続く症例が3-4%5))、不快であること以外は健康に害はないです。自然によくなります。1回目接種後にこのような遅発性の局所反応が出た場合でも、基本的には2回目を受けてもよいとされています。

 発疹が痒い場合は氷などでその部位を冷やす、抗ヒスタミン薬のかゆみ止めやステロイドの軟膏を塗る、痛みが酷いときにはアセトアミノフェンやロキソニン、イブプロフェン(非ステロイド性抗炎症薬)の内服が検討できます1)

 症状がひどい、または数日経過しても軽快しない場合は皮膚科を受診してください。

 

  1. CDC. What to Do If You Have an Allergic Reaction after Getting a COVID-19 Vaccine. 
  2. ​​N Engl J Med. 2021; 384:1273-1277
  3. J Am Acad Dermatol. 2021;85:46-55.
  4. N Engl J Med. 2021;384:403-416.
  5. 厚生労働省 予防接種・ワクチン分科会副反応検討部会&医薬品等安全対策部会安全対策調査会 資料 https://www.mhlw.go.jp/content/10601000/000802343.pdf

Q4-7 接種後の副反応や安全性はどうやって監視されますか?

A

 アメリカや欧州連合にはワクチンを受けた後に起こった出来事の詳細を集めるシステムが複数あります。望ましくない出来事がワクチンによっておこったものなのか(因果関係がある副反応なのか)、それともたまたまワクチンの後にそのタイミングで起こった出来事なのか、専門家が定期的に評価をしています1,2)

 日本でも、接種後に予期せぬ有害事象・副反応疑いの症状が出た場合、予防接種法により医師等が報告をする義務があります2)

 

  1. CDC Ensuring the Safety of COVID-19 Vaccines in the United States
  2. https://www.ema.europa.eu/en/human-regulatory/overview/pharmacovigilance-overview
  3.  厚生労働省 予防接種法に基づく医師等の報告のお願い

Q4-8 新型コロナウイルスワクチンを受けたあとに、新型コロナウイルスにかかるとかえって具合が悪くなるADE(抗体依存性増強現象)という現象が起こるかもしれないとききました。これは本当ですか?

A

 ワクチンを接種した後に感染をすると重症になる、という現象のことをADE(抗体依存性増強現象)といいます。

 ウイルスに感染したり、ワクチン接種の後に「中和作用のない余計な抗体」などができてしまうと、ウイルスが細胞に入りこむのをむしろ助けてしまい、症状を悪化させることがあります。これはデング熱のワクチンで起こりました1)。また、抗体や他のタンパク質、ウイルス等のかたまり(これを免疫複合体と言います)が気管支や肺で強い炎症を引き起こすこともあります(ワクチン関連増強呼吸器疾患 Vaccine-associated enhanced respiratory disease; VAERDといいます)。

 ワクチン開発では、このADEやVAERDが起こらないように、高い中和作用がある抗体を作らせ、働くリンパ球のバランスをよくする(Th1細胞というリンパ球がよく働く)ような免疫を誘導するワクチンの開発が大切とされます。ファイザー・ビオンテック社ワクチン、モデルナ社ワクチンのいずれにおいても、「高い中和作用がある抗体」と「バランスの良いリンパ球の働き」が確認されています。また、動物実験でもADEは観察されていません2-3)し、第2/3相の臨床試験では、実際にADEを起こした被験者はいませんでした4-5)。さらに、世界中で打たれているワクチンになっていますが、ワクチン接種者で重症者が増えるという報告はありません。

 こういったことから、新型コロナウイルスのワクチンにおいてADEが懸念されることは現状ではほぼ考えられないと言えます。

日本の研究グループから、ウイルスの感染後に誘導される一部の抗体(スパイクタンパク質のN末端領域の特定の箇所(NTD)に結合する抗体)が、ウイルスの感染を増強する活性を持つ可能性があることが報告されています6)。ただし、この実験は試験管内でのウイルス感染実験でのみ観察された現象であり、実際にヒトにウイルスが感染した場合に、特定の抗体によるウイルス感染の増強が起きるのかどうか、今後の研究で詳しく検証される必要があります。また、ワクチン接種者では中和抗体が非常にたくさん生成されており、上記のような抗体による感染増強の効果よりも、ウイルスの感染を防ぐ中和抗体の効果が大きいと考えられます。なにより、現在までにワクチン接種者でウイルス感染が増強され重症化しやすくなるという現象は報告されていないことから、現時点でワクチン接種者において抗体による感染増強ADEが生じる可能性は非常に低いと考えられます。

  1. N Engl J Med. 2018;379:327-40
  2. N Engl J Med. 2020;383:1544-1555
  3. bioRxiv. A prefusion SARS-CoV-2 spike RNA vaccine is highly immunogenic and prevents lung infection in non-human primates
  4. N Engl J Med. 2020;383:2603-261
  5. N Engl J Med. 2021;384:403-416
  6. Cell. 2021; DOI: 10.1016/j.cell.2021.05.032

Q4-9 新型コロナウイルスワクチンの後に、血栓症が起こるのでしょうか?

A

 ヨーロッパなどで使用されているアストラゼネカ社や米国で使用されているジョンソンエンドジョンソン社のアデノウイルスベクターワクチンが、非常に稀(約25万回接種に1回)に血小板の減少を伴う特殊な血栓症(ワクチン起因性免疫性血栓性血小板減少症、VITT)を起こす可能性があることが報告されています1-4)。しかし、日本で既に承認されているファイザー社のmRNAワクチンや、モデルナ社のmRNAワクチンでは、このような血栓症との関連は認められていません。

 アストラゼネカ社やジョンソンエンドジョンソン社のワクチン接種後に報告されている特殊な血栓症は、現在のところほとんどが60歳以下の女性、ワクチン接種後2週間以内に起こるといわれています。なぜこのような血栓症が生じることがあるのか、まだ明らかではありませんが、以前から知られている「ヘパリン起因性血小板減少症(HIT)」という病気に似ている仕組みがあると考えられています。ヘパリン起因性血小板減少症とは、ヘパリンという薬を使っている際に稀に起こる、血小板が減っているのに血栓ができる病気です。今後、更に原因が検討され、どのような方であれば安全に使用できるか、検討が進められる見込みです。

 なお、経口避妊薬の使用そのものが血栓症のリスクとなりますが、使用中でもベクターワクチンに関連した血栓症のリスクが増えるわけではないと考えられるため、英国王立産婦人科医協会も米国CDCもベクターワクチンの接種前後で経口避妊薬の使用を控える必要はないとしています4-5)

  1. N Engl J Med. 2021 Apr 9. doi: 10.1056/NEJMoa2104840
  2. N Engl J Med. 2021 doi: 10.1056/NEJMoa2104882
  3. BMJ. 2021;373:n931
  4. FSRH CEU statement: Cerebral venous sinus thrombosis AstraZeneca COVID-19 vaccination and CHC.. 
  5. CDC.CDC Recommends Use of Johnson & Johnson’s Janssen COVID-19 Vaccine Resume.

Q4-10 新型コロナウイルスワクチンで心筋炎が起こるのでしょうか?

A

 イスラエルや米国を始めとした海外において、ファイザー・ビオンテック社やモデルナ社ワクチン接種後に稀ですが、主に若い男性で心筋炎や心膜炎を起こした症例の報告があります1,2)。米国から報告された頻度は12-29歳の男性で二回目の接種後100万回に40.6回です3)。接種後1週間以内に起こり、1回目の後よりも2回目の後に起こりやすいことが報告されています。ただし、CDCはまだワクチン接種が原因と結論付けられたわけではなく、注意深く調査されている最中です。

 ワクチンを接種した後に体調不良をきたした人がいる場合、ワクチンが原因で起きているのかどうかを調べることが大切です。米国CDCは、米国内で報告された心筋炎の経過などを評価しており、ワクチン接種との因果関係を調査しています2)

 また、今回報告された心筋炎の症例は、そのほとんどが重症でなく、2週間以内に治癒したと報告されています。こういったことから、米国ではCDCは心筋炎のリスクよりも新型コロナウイルス感染症のリスクの方が大きいとして、引き続き若年者を含めた全ての対象者への接種を推奨しています。

 特に若い男性においてコロナワクチン接種後、数日以内に胸の痛み・息苦しさ・動悸などが生じた場合は心筋炎の可能性も考え、医師にすぐ相談しましょう。

  1. Science. Israel reports link between rare cases of heart inflammation and COVID-19 vaccination in young men
  2. CDC. Myocarditis and Pericarditis Following mRNA COVID-19 Vaccination
  3. CDC. Reports of Myocarditis Among Vaccine Recipients: Update from the Advisory Committee on Immunization Practices — United States, June 2021

Q4-11 新型コロナウイルスワクチンでリンパ節が腫れることがあると聞きましたが本当でしょうか?

A

 mRNAワクチンを接種した後に、腋(ワキ)の下や頸(クビ)のリンパ節が腫れることがあることがわかっています。大規模な臨床試験においては、ファイザー社のワクチンでは、約0.3%にリンパ節の腫れが報告されています1)。モデルナ社のワクチンの報告では、リンパ節の腫れは1.1%、ワキの下の痛みもしくは腫れは10.2%で起こっています2)。なお、リンパ節の腫大は約4週間以内におさまることがわかっています。

 ワクチン接種後のリンパ節の腫れは、がんのリンパ節転移とまぎらわしい可能性があります。ブレスト・イメージング学会は、乳がん検診を予定されている方は、診療に遅れが出ないのであれば、検診を受けるタイミングを、1回目接種の前か、2回目接種から4-6週間後にすることを推奨しています4)

 がんの画像検索などをワクチン接種後に受けられる方は、必ず医師に受けたワクチンの日程について伝えて下さい。

 

  1. N Engl J Med. 2020;383:2603-2615
  2. N Engl J Med.2021; 384:403-416
  3. Acad Radiol 2021 https://doi.org/10.1016/j.acra.2021.04.007
  4. Society of Breast Imaging. COVID-19 Resources

Q4-12 新型コロナウイルスワクチンを接種することで、間接的に周囲の人に悪い影響を与えてしまう可能性はありますか?

A

新型コロナワクチンを接種することで、周囲の人に月経不順や体調の不調などの悪い影響を与えてしまう可能性はありません。

日本で使用されているファイザー社、モデルナ社のmRNAワクチンは、ワクチンを打つことで新型コロナウイルスに感染することは原理的にあり得ません。このため、ワクチン接種者の周囲に感染が拡がることも、もちろんありません。

また、ワクチンの成分であるmRNAと、ワクチンを打つことで作られる新型コロナウイルスのスパイクタンパク質は、投与された人の体の中で代謝され、人の吐く息などに漏れてくることはありません。このため、ワクチンを打っていない周囲の人に影響が出ることはありません。なお、新型コロナワクチンを接種することで、新型コロナウイルスに感染する可能性を下げることができます。このため、周囲の人に感染を拡げることを防ぐ良い影響はあると考えられています。

アレルギーや基礎疾患のある方、妊娠中・授乳中・妊娠を考えている方へのワクチン接種

Q5-1 花粉症や食物アレルギーがあります。mRNAワクチンを接種して大丈夫ですか?

A

 花粉症や食物アレルギー、喘息やアトピー性皮膚炎などがある方でも接種可能です。ファイザー・ビオンテック社のmRNAワクチンの添付文書には、mRNAワクチンの成分によって重度の過敏症を起こしたことがある人は接種しないように注意されています1-3)

 重度の過敏症とはアナフィラキシーや、全身性の皮膚・粘膜症状、喘鳴、呼吸困難、頻脈、血圧低下等、アナフィラキシーを疑わせる複数の症状の既往とされています3)

 また、次のような方に接種する時には、注意が必要と書かれています。

・いままでに他の予防接種で2日以内に熱が出たり、全身に発疹がでるなどのアレルギーを疑う症状があった人

・mRNAワクチンの成分に対して、アレルギーがでる可能性のある人(mRNAワクチンに含まれるPEG(ポリエチレングリコール)という成分に対して、アレルギーの疑いがある人は注意が必要です)

 どのような方であっても、ワクチン接種後には稀にアナフィラキシーが起こってしまう可能性があるので、ワクチンを接種した後は少なくとも 15 分間は病院の中で様子をみることが大切です。また、今回の接種するワクチン以外のものに対して過去にアナフィラキシーなどの重いアレル ギー症状を引き起こしたことがある人は、接種後 30 分程度様子をみることになっています。

 なお、米国CDCは他のワクチンや薬、食べ物、動物、ラテックス等のものに対する重いアレルギー反応(アナフィラキシーなど)を起こしたことのある方も接種してもよいとしています4)今回接種するワクチンの成分に対する重いアレルギー反応を起こしたことがある方が接種できないという点は同じです1)

 今回のワクチンのアナフィラキシーの原因として一番可能性が高いと考えられているのはポリエチレングリコール(PEG)という物質です。PEGにはたくさんの種類があり、大腸検査の下剤や薬剤、日用品等に幅広く使われています。米国CDCはPEGに対する即時型のアレルギーを起こしたことがある方も接種を控えたほうがよいと言っています。また、mRNAワクチンの1回目の接種直後にアナフィラキシーなどの重いアレルギー反応が出た方は2回目の接種を控えるよう推奨しています。

 

  1. コミナティ 添付文書  
  2. 新型コロナウイルス感染症に係る予防接種の実施に関する手引き
  3. https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/vaccine_moderna.html
  4. CDC. COVID-19 Vaccines and Allergic Reactions

Q5-2 免疫不全やHIVにかかっている人もmRNAワクチンを接種しても大丈夫でしょうか?

A

 免疫不全のある方やHIVに感染している方に対して、特別に臨床試験を行ったわけではないので、こういう方におけるワクチンの有効性や安全性は、まだ十分明らかになってはいません。しかし、HIV感染者であっても、病状が落ち着いている方はmRNAワクチンの臨床試験に参加しており、一定の安全性は確認されているといえます1)また、これらの基礎疾患のある方については新型コロナウイルスの感染で重症になるリスクが高いということも大切な点です1)

 mRNAワクチンは、原理的にワクチンを接種してもウイルスに感染することはありません。一般的に、免疫不全のある方に問題になるのは、生ワクチンと呼ばれる種類の、弱らせたウイルス等の病原体を含むワクチンです。免疫に問題のある方や、免疫を抑える薬を服用している方では、mRNAワクチンによって免疫がつきにくい可能性はありますが、mRNAワクチンが特に免疫不全の方で悪いことを起こす事は考えにくいとされています。接種する場合、しない場合それぞれの利点、心配な点をかかりつけ医と相談し、接種を検討して頂く必要があります2)

 米国では免疫が中等度から重度落ちている方に関しては、免疫がつきにくいことと、重症化するリスクが高いことから、3回目の接種をすることを推奨しています3)

 

  1. CDC. Interim Clinical Considerations for Use of mRNA COVID-19 Vaccines Currently Authorized in the United States
  2. 日本リウマチ学会.新型コロナウイルス(COVID-19)ワクチンについて
  3. CDC. COVID-19 Vaccines for Moderately to Severely Immunocompromised People

Q5-3 自己免疫性疾患の方にmRNAワクチンを接種しても大丈夫でしょうか?

A

 米国CDCは、自己免疫疾患の方におけるワクチンの安全性・有効性のデータはないものの、自己免疫疾患患者でもmRNAワクチンの接種は可能としています1)。米国リウマチ学会は、リウマチ性疾患や自己免疫・炎症性疾患の患者は、新型コロナウイルス感染症発症時の重症化リスクが高いため、基本的にワクチン接種を推奨しています2)

  1. CDC. Interim Clinical Considerations for Use of mRNA COVID-19 Vaccines Currently Authorized in the United States
  2. ACR COVID-19 Vaccine Guidance Recommends Vaccination, Addresses Immunosuppressant Drugs & Patient Concerns

Q5-4 がん患者なのですが、接種しても大丈夫でしょうか?

A

 がんをもつ患者さんは、新型コロナウイルスに感染した場合、重症化するリスクが高いことが分かっているため、複数のがん関連の学会や団体が接種を推奨しています1-3)。がんを持つ患者さんにおけるmRNAワクチンの有効性や安全性に関するデータは限定的ではありますが4,5)、生ワクチンとは違い、ウイルスに感染することは原理的にありえないため、基本的には不活化ワクチンと同様の扱いでよいと考えられます。効果という面では、抗がん剤の治療により免疫機能が低下している場合、中和抗体が作られにくいという研究報告があります6)。免疫の機能が低下している方では、1回のワクチン接種では抗体ができない方もいるため、2回接種することが重要です。また、接種をした後も感染対策を続けることが大切になります。なお、米国では免疫が中等度から重度落ちている方に関しては、免疫がつきにくいことと、重症化するリスクが高いことから、3回目の接種をすることを推奨しています7)

 一般的に、がんの患者さんがワクチンを受けられなかったり、その有効性がはっきりしない場合、周りの家族がワクチンを接種して感染を防ぐことにより、重症化リスクの高いがんの患者さん(のみならず、高齢者や免疫抑制状態の方)を守る効果があるとされています。このような理由から、米国感染症学会(IDSA)は、免疫不全のある方の周囲の方々に対するワクチン接種を強く推奨しています5)

 

参考になるサイト

 

 

  1. http://www.jsco.or.jp/jpn/index/page/id/2377
  2. https://www.nccn.org/docs/default-source/covid-19/2021_covid-19_vaccination_guidance_v2-0.pdf?sfvrsn=b483da2b_2
  3. https://www.cancer.org/content/dam/CRC/PDF/Public/9547.00.pdf
  4. CDC. Interim Clinical Considerations for Use of mRNA COVID-19 Vaccines Currently Authorized in the United States
  5. IDSA. Vaccines FAQ
  6. Lancet Oncol 2021; 22: 765–78
  7. CDC. COVID-19 Vaccines for Moderately to Severely Immunocompromised People 

 

Q5-5 ワクチンで不妊になることはありますか?これから妊娠を考えているのですが、mRNAワクチンを接種しても大丈夫でしょうか?不妊治療中でもワクチン接種は可能でしょうか?

A

 米国CDCによると、新型コロナワクチンを含めて、これまでに開発されたワクチンで不妊の原因となったものは1つもありません1)

 これから妊娠を考えている方も新型コロナウイルスに対する mRNAワクチンを接種できます。米国CDC は、 mRNAワクチンは不妊とは関連がなく、mRNAワクチン接種の前に妊娠検査を行うことや、ワクチンのために妊娠を遅らせる必要はないと発表しています1)。実際にファイザー・ビオンテック社やモデルナ社のワクチンを接種した女性がその後、妊娠していることも報告されています。もし接種後に妊娠していたことがわかった場合も、ワクチン接種が妊娠に悪影響を及ぼすという報告はありません。さらに、⽇本産婦⼈科感染症学会は「不妊治療中でもワクチン接種は可能」という見解を出しています2)

 なお、新型コロナウイルスのワクチンと不妊に関する誤情報に関しては、次のような経緯を知っておくと理解しやすいです。ことの発端は、ファイザー社に以前勤めていたことのある研究者が、ワクチン接種で女性が不妊になる可能性があるのではないかと主張しインターネットで拡散されたことです。ワクチンによって体の中で作られるスパイクタンパク質(新型コロナウイルスの表面の突起物)に対する抗体が、胎盤にあるシンシチンー1という蛋白質にも反応してしまう可能性があるという主張でした。しかし実際にはこれらのタンパク質は全く似ていないため、ワクチンによってできる抗体が胎盤を攻撃することはないと考えられています3)

 また、動物実験においても、接種後のラットの妊娠経過や出産が正常で、生まれたラットの赤ちゃんも臓器や脳などに異常はなかったと確認されています。4)

 

  1. CDC. COVID-19 Vaccines While Pregnant or Breastfeeding
  2. 女性のみなさまへ 新型コロナウイルスワクチン(mRNAワクチン) Q & A
    http://jsidog.kenkyuukai.jp/images/sys/information/20210721190701-57649255BD0A756A3E48F8FEB3D9AC5B55FDB9F89BB2D2EFC9C5AA308C98CC3D.pdf
  3. Nature Reviews Immunology. 2021; 21:200-201
  4. Reproductive Toxicology

Q5-6 妊娠中の女性はmRNAワクチンを接種しても大丈夫でしょうか?

A

 日本産科婦人科学会も米国CDC も、妊娠中の mRNAワクチンの接種を時期を問わず推奨しています1, 2)。それは妊婦は同世代の妊娠していない女性と比べて、新型コロナウイルスに感染した場合に重症になりやすく、また早産や妊娠合併症、胎児への悪影響のリスクが上がるからです2,3,4,)

 米国では、既に14万人以上の妊婦が新型コロナワクチンを接種しています(8月18日時点)5)。妊娠中に mRNAワクチン接種をした女性の大規模な追跡研究では、副反応の頻度などは同年代の妊娠していない女性と同程度であることがわかりました。また、その中で妊娠を完了した827人に対する調査の結果、胎児や出産への影響はなかったことが報告されています6)。妊婦中の女性に対する mRNAワクチンの安全性や有効性に関するランダム化比較試験も現在行われています。

 妊娠中に mRNAワクチンを受けた方の臍帯血(胎児の血液と同じ)や母乳を調べた研究では、臍帯血にも母乳中に新型コロナウイルスに対する抗体があることが確認されています。こうした抗体が、産後の新生児を感染から守る効果があることが期待されています7)

 なお、日本産科婦人科学会は妊婦が感染する場合の約8割は、夫やパートナーからの感染であるため、妊婦の夫またはパートナーにもワクチン接種を推奨しています1)

 

  1. 産科婦人科学会 ―新型コロナウイルス(メッセンジャーRNA)ワクチンについて(第 2 報)― http://www.jsog.or.jp/news/pdf/20210814_COVID19_02.pdf 
  2.  CDC.COVID-19 Vaccines While Pregnant or Breastfeeding. 
  3. CDC. Interim Clinical Considerations for Use of mRNA COVID-19 Vaccines Currently Authorized in the United States
  4. JAMA Pediatr. 2021. doi:10.1001/jamapediatrics.2021.1050
  5. CDC. V-safe COVID-19 Vaccine Pregnancy Registry.
  6. N Engl J Med. DOI: 10.1056/NEJMoa2104983
  7. American Journal of Obstetrics and Gynecology. DOI: 10.1016/j/ajog.2021.03.023

Q5-7 授乳中の女性はmRNAワクチンを接種できますか?

A

 授乳中の方も、新型コロナワクチンのmRNAワクチンを接種することができます1)。mRNAワクチンを接種して4~48時間経過した7名のお母さんの母乳を複数回調べた結果、母乳にmRNAが検出されなかったという報告があります2)。また、もし母乳の中に多少含まれていたとしても殆どが胃酸で分解され、もし吸収されても赤ちゃんに影響を与える可能性は低いと考えられています2,3)

 授乳中にmRNAワクチンを受けた方の母乳を調べた研究では、母乳中に新型コロナウイルスに対する抗体(IgAおよびIgG)があることが確認されています。こうした抗体が、授乳中の子供を感染から守る効果があることが期待されています3,4)

 

  1. CDC. Vaccination Considerations for People who are Pregnant or Breastfeeding
  2. JAMA Pediatr. doi:10.1001/jamapediatrics.2021.1929
  3. Academy of Breastfeeding Medicine. Considerations for COVID-19 vaccination in lactation. ABM Statement.
  4. JAMA. doi:10.1001/jama.2021.5782
  5. American Journal of Obstetrics and Gynecology DOI: 10.1016/j/ajog.2021.03.023

Q5-8 経口避妊薬(ピル)を飲んでいてもワクチン接種ができますか?

A

 経口避妊薬を内服していてもコロナワクチンの接種ができます。

 コロナワクチンで報告されている血栓はファイザー社やモデルナ社のmRNAワクチンではなく、ジョンソンエンドジョンソン社やアストラゼネカ社のベクターワクチンの接種に関連したものです(Q&A 4-9 をご参照ください)。

 また、経口避妊薬そのものが、種類によっては血栓症のリスクとなりますが、ベクターワクチンで報告されている血栓症は血小板の低下を伴う特殊な血栓です。米国産婦人科学会は経口避妊薬がジョンソンエンドジョンソン社のコロナワクチンによる血栓症のリスクを上げることはないとしています1)

  1. ACOG. Coronavirus (COVID-19) and Women’s Health Care: A Message for Patients. 

実際の接種

Q6-1 新型コロナウイルスに既に感染した人は接種しなくてよいですか?

A

 新型コロナウイルスに既にかかった方にも、ワクチンの接種が推奨されます1)

 これは、症状がなくて気付かなかった場合(無顕性感染)や感染後の症状が長引いている場合も含みます。その理由は、再度感染する可能性があることと、自然に感染するよりもワクチン接種の方が新型コロナウイルスに対する血中の抗体の値が高くなることが分かっているからです2,3)

 なお、米国CDCは、感染したばかりの方については、感染から回復し、隔離の必要がなくなってからの接種を勧めており、対象者はワクチン接種前に感染を経験した人、もしくは mRNAワクチンの初回接種後かつ2回目の接種前に感染を経験した人​となっ​ています1)また、新型コロナウイルス回復期血漿療法やモノクローナル抗体治療を受けた方は、90日以内の再感染のリスクは低いということから、90日経過してからの接種が勧められています。もし感染された方で、入院中にどのような治療を受けたかについてはわからない場合は、適宜治療を受けた病院の医師にご確認ください。

 

  1. CDC. Interim Clinical Considerations for Use of mRNA COVID-19 Vaccines Currently Authorized in the United States
  2. medRxiv. BNT162b2 induces SARS-CoV-2-neutralising antibodies and T cells in humans
  3. N Engl J Med 2021; 384:80-82

Q6-2 2回接種ではなく、1回接種だけで効果ありますか?

A

 効果のある免疫を作るためには、2回の接種が必要です。ファイザー・ビオンテック社ワクチンの1回目接種後(2回目接種直前)のワクチンの発症予防としての効果は約50%でした1)。ファイザー・ビオンテック社ワクチンとアストラゼネカ社ワクチンの変異ウイルスに対しての発症予防効果を調べた研究によると、アルファに対しては約50%、デルタに対してはさらに下がり約30%でした2)。モデルナ社ワクチンに関しても同等と考えられ3,4)、1回のみの接種では予防効果が不十分です。

 特に抗がん剤の治療を受けている方や、臓器移植後で免疫抑制剤などを使用されている方では、1回の接種では十分な抗体ができない方がいることが報告されているので5)免疫機能が低下している方では2回の接種を完了することが重要です。

 一般的に、子どもの接種するワクチンは、2回のもの、3回のものとあります。いずれにしても、個々のワクチンによって、免疫に対象となる病原体との戦い方を十分に「覚えさせる」ために、必要な回数が決められています。

 

  1. N Engl J Med. 2020;383:2603-2615
  2. N Engl J Med. 2021;385: 585–594.
  3. N Engl J Med. 2021. doi:10.1056/NEJMoa2109522
  4. Clin Infect Dis. 2021. doi:10.1093/cid/ciab640
  5. N Engl J Med. 2021; 384:1412-1423

Q6-3 1回目と2回目で違うmRNAワクチンを接種しても大丈夫ですか?

A

 2つの異なるmRNAワクチンを使った場合の効果については、今のところ検証されていません。米国CDCは、臨床試験のやり方に沿って同じワクチンを接種することを推奨しています1)

 一方、1回目にアストラゼネカ社のベクターワクチンを打った方に2回目にファイザー社ワクチンを接種した場合、2回ともアストラゼネカ社を接種した方に比べて高い免疫効果(抗体価)を得られることを示唆する研究が出てきており2)、1回目にアストラゼネカ社ワクチンを接種した方に対し2回目の接種を mRNAワクチンにより行うことを認める方針が複数の国で示されています3,4)

 ただし、発熱や頭痛などの副反応の頻度はこうした組み合わせ接種で若干増加することが報告されています4)。現状では日本においてはこうした組み合わせ接種は推奨されていませんが、今後アストラゼネカ社ワクチン接種者に対する mRNAワクチンの接種が検討される可能性はあります。

  1. CDC. Interim Clinical Considerations for Use of mRNA COVID-19 Vaccines Currently Authorized in the United States
  2. Nat Med. 2021. doi: 10.1038/s41591-021-01449-9
  3. National Advisory Committee on Immunization, Canada. Recommendations on the use of COVID-19 vaccines.
  4. Lancet. 2021; 397(10289):2043-2046

Q6-4 ワクチン接種したら感染予防策をやめてもいいですか?

A

 mRNAワクチンについては、無症状の感染も防ぐ効果があることが分かっています。しかし、ワクチンの接種によりどれくらい集団の中で感染の広がりが抑えられるかはまだ十分に明らかになっていません。

 米国CDCはワクチンを打って接種が完了してから2週間が完了した人は、マスクの着用は必要なく、パンデミック以前の生活に戻っても良いとしていました。しかし、ワクチン接種率が十分でない中で、流行が伝播性の強いデルタに置き換わり流行が急拡大している現在の状況では、ブレイクスルー感染と言われる、ワクチン接種を完了していても新型コロナウイルスに感染する例も数多くみられるため、マスク着用などの予防策を行うことが再度推奨されるようになりました1)(ただしアメリカの現在の流行のほとんどはワクチン未接種者の感染によるものです)。

 このような感染予防策に関する推奨は、国ごとのワクチン接種率や感染流行状況、変異ウイルスの出現などによって決定されると考えられます。ワクチンを打ってから免疫がしっかりつくまでには時間がかかることと、流行が収まるまですぐにこういった感染予防策を緩めていいわけではないことには注意が必要です。

 ワクチン接種が完了した後でも感染防止効果は100%というわけではないため、周囲の流行状況に応じて一定の感染リスクが残っていることにも注意しましょう。特に、抗がん剤の治療の方など、免疫の機能が低下している方の中には、十分な中和抗体を得られない方もいることが報告されているため3)、そうした方は感染状況によっては感染予防策の継続が必要と考えられます。

 

  1. CDC. When You’ve Been Fully Vaccinated
  2.  https://www.cdc.gov/coronavirus/2019-ncov/variants/delta-variant.html
  3. Lancet Oncol. 2021; 22: 765–78
  4. https://www.cancer.gov/news-events/cancer-currents-blog/2021/people-with-cancer-coronavirus-vaccine

Q6-5 インフルエンザワクチンや帯状疱疹ワクチンなど、他の予防接種を新型コロナウイルスのワクチンの前後にうけても大丈夫ですか?

A

 現時点では、他のワクチンとの同時接種での安全性やワクチンの有効性に関する十分なデータがないので、原則的にはmRNAワクチン接種の前後14日以内はインフルエンザを含めた他のワクチンの接種は控えることが推奨されています1)米国CDCも同様の推奨をしていましたが、現在では従来のワクチンの知見を踏まえ他のワクチンとの時期にかかわらず接種可能としています2)

日本においては、創傷時の破傷風トキソイド等、緊急性を要するものに関しては、例外として2週間を空けずに接種することが可能としております3)

 

  1. https://www.cov19-vaccine.mhlw.go.jp/qa/0037.html
  2. CDC. Interim Clinical Considerations for Use of mRNA COVID-19 Vaccines Currently Authorized in the United States
  3. 厚生労働省. 新型コロナワクチンQ&A

Q6-6 お金はかかりますか?

A

 日本でも無料でコロナワクチンの接種が受けられます1)

 

  1. 厚生労働省 新型コロナワクチン接種についてのお知らせ

Q6-7 筋肉注射ですか?

A

 mRNAワクチンは、日本も含めて全世界で筋肉注射で行われています。なお、筋肉注射と皮下注射の間で痛みの差はないという研究結果があります。また、特別に今回のワクチンが接種する時の痛みが強いというわけではないと考えられています。痛みはその時の雰囲気や、気分にも大きく左右されますので、「筋肉注射だから痛い」などと思い込まないことがとても大事です。

Q6-8 ワクチン接種後に、日常生活でしてはいけないことはありますか?

A

 特にありません。体がワクチンに反応して免疫を作る過程で熱が出たり、倦怠感が出たり体調を崩される方もいるので、無理をせず接種前後は余裕をもって過ごしましょう。

Q6-9 ファイザー・ビオンテック社のワクチンは、特別なシリンジ・針を使うと5回分ではなく6回分採取できるのでしょうか?

A

 米国で2020年12月11日にファイザー・ビオンテック社のワクチンが承認された当初、1つのバイアル(ビン)に入っているワクチンの量は5回分とされていました。実際の接種が開始されてから、特別な「無駄なスペース(死腔といいます)の少ない注射器・針」を使うことで、5回ではなく6回分取れることが明らかになりました1)しかし、米国でも、この死腔の少ない特別な注射器・針は、もともと供給量が少ないため、必ずしも現場で、1つのビンから6回分取れているわけではありません。日本の添付文書には「希釈後の液は6回接種分(1回0.3mL)を有する。死腔の少ない注射針又は注射筒を使用した場合、6回分を採取することができる。標準的な注射針及び注射筒等を使用した場合、6回目の接種分を採取できないことがある。1回0.3mLを採取できない場合、残量は廃棄すること。 」と記載されています2)

 

  1. Letter Granting EUA Amendment (01/06/2021)
  2. コミナティ 添付文書

Q6-10 今回のmRNAワクチンは、特に2回目で、頭痛、関節痛、発熱などが出やすいとききます。こうした副反応が出た時に、どうしたらよいのでしょうか。

A

 ワクチン接種をした後に、発熱や関節痛などの症状が出て辛ければ、市販等の解熱鎮痛剤(アセトアミノフェン、イブプロフェン、ロキソプロフェンなど)を使用してもかまいません。効果と安全性を検証する大規模な臨床試験においても、ワクチン接種後に副反応が出た方の一部は解熱鎮痛剤を内服しました。ただし、接種前に予防として解熱鎮痛剤を飲むことは、現段階では、ワクチンによって作られる免疫に影響を与える可能性がないとは言い切れず、CDCは推奨していません。また、持病のためにそうした薬を飲んでいる方は中止する必要はありません。

 

  1. Interim Clinical Considerations for Use of mRNA COVID-19 Vaccines Currently Authorized in the  United States
  2. Lancet. 2009;374(9698):1339-50.

Q6-11 ワクチンを受けた後はお風呂に入っても大丈夫ですか?

A

 ワクチンを受けた日にお風呂に入ることは特に問題ないと考えられます1)。入浴に限ったことではありませんが、高齢の方で倦怠感がとても強い場合などは、あまり無理をしない方が良いでしょう。

 

  1. 厚生労働省. 新型コロナワクチンQ&A

Q6-12 ワクチン接種前後に飲酒をしても大丈夫ですか?

A

 新型コロナウイルスのワクチンの効果を、接種前後のアルコールの量で比較した研究はありませんが、少量のアルコールは免疫に大きな影響を与えることはないと考えられます。ただし、お酒の飲み過ぎは免疫機能を低下させることが知られているので、避けた方が良いでしょう1,2)。また、接種当日の体調を整えるためにも、接種前日の深酒は避けた方が良いでしょう。

 

  1. Clin Microbiol Rev. 2019; 32:e00084-18.
  2.  Alcohol Res. 2015;37:185-97.

Q6-13 ワクチン接種後に運動をしても大丈夫ですか?

A

 過度な運動ではなければ大丈夫です1)接種した腕の痛みや倦怠感などの副反応が出た場合は無理をしないようにしましょう。

 

  1. 厚生労働省. 新型コロナワクチンQ&A  

 

Q6-14 副反応が起きた場合の補償はどうなっていますか。

A

 新型コロナワクチンの接種により、副反応による健康被害が生じた場合は、他のワクチン接種と同様、予防接種法に基づく救済(医療費、障害年金等の給付)を受けることができます。詳しくは、厚生労働省のサイトをご参照下さい。

 

  1. 予防接種健康被害救済制度|厚生労働省 (mhlw.go.jp)

高齢者へのワクチン接種

Q7-1 高齢者で一番多い副反応は何でしょうか?

A

 高齢者にファイザー・ビオンテック社のワクチンを接種した後に起こる副反応として、最も頻度が高いものは接種部位の痛みで、6-7割の方に起こることが分かっています1)。その他に頻度の高い副反応として、倦怠感、頭痛、悪寒、筋肉痛、関節痛などがあります1,2)。これらは免疫が働いている間接的な証拠であり、数日以内で良くなることが分かっています。
 こうした副反応は、若年者と比べて、年齢が高い方の方がやや起こりにくいことが報告されています1,2)。ワクチン接種後に発熱や倦怠感が強く出る方もいるため、無理をせず休めるようにしておくことが重要です。

 

  1. N Engl J Med. 2020; 383:2603-2615 
  2. 新型コロナワクチンの投与開始初期の重点的調査(コホート調査)-健康観察日誌集計の中間報告(3)

Q7-2 高齢者と若年者では、効果や副反応に違いはありますか。

A

 日本で承認されたファイザー・ビオンテック社のワクチンは、高齢者に対しても9割以上の発症予防効果があることが、大規模な治験やイスラエルの実社会での臨床研究でわかっています1,2)

 副反応については、接種部位の局所の副反応も、発熱や倦怠感、頭痛などの全身性の副反応も、若年者よりも高齢者の方が少し頻度が低いことが報告されています1,3)

 

  1. N Engl J Med. 2020; 383:2603-2615
  2. N Engl J Med. 2021;384:1412-1423
  3. 新型コロナワクチンの投与開始初期の重点的調査(コホート調査)-健康観察日誌集計の中間報告(3)

アストラゼネカ社のウイルスベクターワクチンについて

Q8-1 アストラゼネカ社のベクターワクチンの仕組みについて教えて下さい。

A

 アストラゼネカ社のワクチン(バキスゼブリア筋注)には、チンパンジーの風邪の原因になる”チンパンジーアデノウイルス”を改変したウイルスが使われています。この改変チンパンジーアデノウイルス (ChAdOx-1) に、新型コロナウイルスのスパイクタンパク質の設計図である遺伝情報を描き込んだDNAが乗せられています。

 このように、ウイルスに特定の遺伝情報を運んでもらうようなワクチンを、ウイルスベクター(”運び屋”という意味)ワクチンと呼びます。

 本来、ウイルスはヒトの細胞に感染し、細胞内で自分自身を複製して増殖しますが、アストラゼネカ社のワクチンに使われるアデノウイルスベクターは、細胞内で自己複製できないように加工されていますので、接種者の体内でウイルスベクターが増殖することはありません。

 ベクターワクチンを筋肉内に注射すると、注射した部位の周りの細胞にウイルスベクターが感染し、細胞内で新型コロナウイルスのスパイクタンパク質が作られます。そのスパイクタンパク質を免疫細胞が認識して、スパイクタンパク質に対する抗体や免疫細胞がつくられます。

 mRNAワクチンと比べると、アストラゼネカ社のベクターワクチンはウイルスを使ってヒトの細胞にコロナウイルスのスパイクタンパク質の設計図を届けるという点が異なります。しかし、設計図を元に細胞にスパイクタンパク質を作らせることで免疫を誘導する、という仕組みはmRNAワクチンと似ています。

Q8-2 アストラゼネカ社のベクターワクチンの効果について教えて下さい。

A

 アストラゼネカ 社のワクチンは、ブラジル、南アフリカ、英国で実施された臨床試験から、2回目接種から14日以降の発症予防効果は62.1%であると報告されています1)

 アストラゼネカ社のワクチンの変異ウイルスに対する効果については、変異ウイルスの種類によって異なります。例えば、イギリスにおける研究では、B.1.1.7(アルファ)に対しては、ある程度の予防効果(70.4%)があることが報告されています2)。一方、B.1.351(ベータ)に対しては、軽症/中等症の新型コロナウイルス 感染症を予防する効果は確認されませんでした3)。B.1.671.2(デルタ)に対しては1回接種の効果はやや低くなる(30%)ものの、2回接種を終えた場合の効果は大きくは下がっていない(67%)ことが報告されています4)

 

  1. Lancet. 2021;397(10269):99-111.
  2. Lancet. 2021; 397: 1351–62
  3. N Engl J Med. 2021; 384:1885-1898
  4. Public Health England

Q8-3 アストラゼネカ社のベクターワクチンの副反応・安全性について教えて下さい。

A

 アストラゼネカ社のウイルスベクターワクチンを接種した際の副反応については、日本国内で行われた臨床試験でも調べられています1)。ほとんどの副反応は接種翌日からあらわれ、持続期間は数日以内であるとされています。接種後6日以内の主な有害事象として、注射部分の痛み、筋肉痛、倦怠感、疲労、頭痛、悪寒、発熱、などが挙げられます。これらの症状はいずれも重篤なものではなく、自然に回復することがわかっています。また、こうした副反応には解熱剤が有効であるとされています2)

バキスゼブリア筋注 添付文書より抜粋

 

 その他には、頻度は稀ですがアナフィラキシーや、以下の副反応の可能性が海外から報告されています4,5)

(1)血小板減少を伴う特殊な血栓症(ワクチン起因性免疫性血栓性血小板減少症、VITT)

 正確な頻度はまだ不明ですが、これまでに接種された人のデータからは、ワクチン接種後に血栓症が重症化する頻度は10万人あたり1人以下とされています3)。この特殊な血栓症は、現在のところほとんどが60歳以下の女性に起こり、ワクチン接種後2週間以内に症状が出るといわれています。

 このような血栓症が生じる原因はまだ明らかではありませんが、以前から知られている「ヘパリン起因性血小板減少症(HIT)」という病気に似ている仕組みがあると考えられています。ヘパリン起因性血小板減少症とは、ヘパリンという薬を使っている際に稀に起こる病気で、血液の中にある、出血時に血を固まらせる血小板という血球が減ると同時に、血液の中に血栓ができるものです。

 ワクチン接種後28日以内に、激しいまたは持続する頭痛、目の見えにくさ、息切れ、胸痛、けいれん、足の痛みやむくみ、接種部位以外のあざ(皮下出血)、持続する腹痛などの症状が出現した場合は、医師に相談し、医療機関への受診が必要です。

(2)ギランバレー症候群:手足の力が入りにくいなどの運動障害、しびれなどの感覚障害、排尿・排便障害などの症状をきたします。

(3)血管漏出症候群:手足のむくみ、血圧の低下などの症状をきたします。

 接種後に上記の症状や、気になる症状を認めた場合は、かかりつけ医や医療機関に相談することが大切です。これら既知の低頻度の副反応に加えて、ウイルスベクターに特有の潜在的なリスクについても、今後も注意深く調査されます。

 

  1. バキスゼブリア筋注 添付文書
  2. Information for Healthcare Professionals on COVID-19 Vaccine AstraZeneca
  3. N Engl J Med. 2021: DOI: 10.1056/NEJMe2106315
  4. https://www.ema.europa.eu/en/news/meeting-highlights-pharmacovigilance-risk-assessment-committee-prac-7-10-june-2021
  5. 厚生労働省、「アストラゼネカ社の新型コロナワクチンについて

Q8-4 アストラゼネカ社のベクターワクチンは日本で使用されますか。

A

 アストラゼネカ社のウイルスベクターワクチンは2021年8月下旬より、特に感染が拡大している地域に優先して配布され、原則として40才以上の方を対象に接種可能となる見込みです1)

 

  1. 厚生労働省、「アストラゼネカ社の新型コロナワクチンについて

小児へのワクチン接種

Q9-1 子供でも接種できますか?

A

 現在日本では、ファイザー・ビオンテック社ワクチンとモデルナ社のワクチン、いずれも12歳以上が接種対象となっています1)

 ファイザー・ビオンテック社の mRNAワクチンに関しては、12〜15歳の約2,300名の小児が参加した臨床試験で、ワクチンを接種した群で0人、プラセボ群で16人の発症者が確認され、高い発症予防効果が確認されました(この研究内では100%の発症予防効果ということになります)。また、副反応についても、16歳以上での試験と同様で問題がないことが報告されています2) 

 この結果を受けてファイザー・ビオンテック社の mRNAワクチンは、2021年5月5日にカナダで、5月10日には米国で、日本でも6月1日から接種可能年齢が12歳以上となりました3)。モデルナ社の mRNAワクチンも、12~17歳の約3700名の小児が参加した臨床試験の結果、ワクチンの発症予防効果は93%という結果でした。18歳以上の臨床試験同様、安全性にも問題がないことが確認され4)、この結果を受けて7月19日から接種可能年齢が12歳以上となりました。

 現在、ファイザー・ビオンテック社の mRNAワクチンとモデルナ社の mRNAワクチンでは、海外で生後6か月~11歳を対象とした臨床試験が行われています。

 

  1. 厚生労働省 新型コロナワクチン Q&A
    https://www.cov19-vaccine.mhlw.go.jp/qa/0044.html
  2. N Engl J Med. 2021: DOI:10.1056/NEJMoa2107456
  3. https://www.mhlw.go.jp/content/10601000/000779400.pdf
  4. N Engl J Med. 2021: DOI: 10.1056/NEJMoa2109072

Q9-2 小児(12歳以上)と成人では、効果や副反応に違いはありますか。

A

 ファイザー・ビオンテック社の mRNAワクチンの臨床試験では、12歳から15歳の被験者においてワクチン効果は100%と成人と同様に高い効果が認められました。副反応については、腕の痛み、疲労感、頭痛、筋肉痛、関節痛、寒気や発熱などが成人よりも少し高い頻度で報告されました1,2)

 モデルナ社のmRNAワクチンも、12歳から17歳の被験者においてワクチン効果は93%と成人同様の効果が認められました。副反応は腕の痛み、疲労感、頭痛、筋肉痛、関節痛、寒気や発熱などが成人よりも高い頻度で報告されました3)

 米国CDCによるファイザー社のコロナワクチンを接種した小児における追跡調査も行われており、66,350名の16-17歳の接種者、62,709名の12歳-15歳の接種者において最も多い副反応は接種部位の痛み、疲労感、頭痛、そして筋肉痛でした4)発熱は約30%の接種者に報告されました。殆どの副反応が軽度で、重篤な副反応は稀でした。

 成人同様、12歳以上の小児においても接種部位の疼痛・頭痛・発熱が辛い場合は解熱鎮痛剤を使用して構いません(製品毎に対象年齢などが異なりますので、対象をご確認のうえ、ご使用ください)。

 非常に稀ですが、10代から30代において、mRNAワクチンを接種した後に「心筋炎」や「心外膜炎」の副反応が報告がされています。1回目よりも2回目の接種後に起こることが多く、殆どが軽症で治療に反応し回復しています。コロナワクチン接種後、数日以内に胸の痛み・息苦しさ・動悸などが生じた場合は心筋炎の可能性も考え、すぐに医療機関を受診しましょう。詳しくは質問4-10 をご覧ください5)

 日本小児科学会は「健康な子どもへのワクチン接種には、メリット(感染拡大予防等)とデメリット(副反応等)を本人と養育者が十分理解し、接種前・中・後にきめ細やかな対応が必要です。」としています6)

 

  1. N Engl J Med 2021: DOI: 10.1056/NEJMoa2107456
  2. CDC. Local Reactions, Systemic Reactions, Adverse Events, and Serious Adverse Events: Pfizer-BioNTech COVID-19 Vaccine. 
  3. N Engl J Med. 2021: DOI: 10.1056/NEJMoa2109522
  4. CDC. COVID-19 Vaccine Safety in Adolescents Aged 12–17 Years — United States, December 14, 2020–July 16, 2021 
  5. CDC. Myocarditis and Pericarditis Following mRNA COVID-19 Vaccination
  6. 日本小児科学会 新型コロナワクチン~子どもならびに子どもに接する成人への接種に対する考え方~ http://www.jpeds.or.jp/modules/activity/index.php?content_id=374

Q9-3 接種できない小児を守るには、どのようなことをする必要がありますか。

A

 デルタ変異ウイルスの影響もあり、小児の感染者は増えています。

 小児における感染経路はほとんどが家庭内感染ですが、学校や保育所でのクラスターも起こっています。コロナワクチンを接種できない12歳未満のお子さんを守るためには、同居家族に加え、教師、保育士、医療者などの子どもたちと関わる周りの大人たちがワクチン接種し、子どもへの感染を防ぐことが大切です(コクーン戦略といいます)。もちろん、大人たちの感染予防行動もとても大事で、ワクチン接種と併せて、感染流行状況が良くなるまでは欠かすことができません。

 現在、ファイザー・ビオンテック社とモデルナ社が共に現在6か月以上11歳以下の子どもに対して臨床試験を行っています。低年齢の子供へのワクチン接種の安全性や有効性が検証され次第、接種可能年齢が拡大されると期待されます。接種可能になるまで3密を防ぐ、2歳以上のお子さんはマスク着用などの感染対策を引き続き行う必要があります。

 

  1. CDC. Families with Vaccinated and Unvaccinated Members

Q&A作成チーム

QQ&A作成チーム

A

こびナビ ワクチン説明チーム

こびナビ 安川康介

大阪大学産業科学研究所 曽宮正晴

ロンドン大学衛生熱帯医学大学院 遠藤彰

こびナビ 岡田玲緒奈

ハーバード大学医学部/マサチューセッツ総合病院小児精神科 内田舞

こびナビ 池田早希

こびナビ 峰宗太郎

こびナビ 木下喬弘

明石医療センター総合内科 河野圭

テキサス州立大学ヒューストン校 感染症科 兒子真之

ベイラー医科大学/Baylor St. Luke‘s Medical Center 感染症科 福田由梨子