新型コロナウイルスワクチンでADE(抗体依存性増強現象、Antibody-dependent enhancement)が起こりますか?
2021/02/14
ADEは、自然感染やワクチンによって体内に作られた中和能のない抗体が、ウイルスが人の細胞に入りこむのを助け、ウイルスの感染による症状を悪化させてしまう現象です。これはデング熱ワクチン等で報告されました1)。また免疫複合体等が気道で強い炎症を引き起こすこともあります(ワクチン関連増強呼吸器疾患 Vaccine-associated enhanced respiratory disease;VAERD)。
ワクチン開発では、ADEやVAERDが起こらないように、高い中和能がある抗体を作らせ、そしてTh1細胞優位の免疫反応を誘導するワクチンの開発が大切とされます。ファイザー・ビオンテック社ワクチン、モデルナ社ワクチン、オックスフォード・アストラゼネカ社ワクチン全てにおいて、誘導される抗体は高い中和能を持つことが分かっています。また、Th1優位の免疫が誘導されることも分かっています。第2/3相の臨床試験ではADEを起こした被験者はいませんでした2-3)。重症患者も殆どがワクチン群ではなくプラセボ群で発生しています。VAERDはmRNAワクチン接種後の動物実験でも観察されていません4-5)。こういったことからは、新型コロナウイルスのワクチンにおいてADEが懸念されることは現状ではとても考えにくいと言えます。
- N Engl J Med. 2018;379:327-40
- N Engl J Med. 2020;383:2603-2615
- N Engl J Med. 2021;384:403-416
- N Engl J Med. 2020;383:1544-1555
- bioRxiv. A prefusion SARS-CoV-2 spike RNA vaccine is highly immunogenic and prevents lung infection in non-human primates