9-1 アストラゼネカ社のベクターワクチンの仕組みについて教えて下さい
2022/02/03
アストラゼネカ社のワクチン(バキスゼブリア筋注)には、チンパンジーの風邪の原因になる”チンパンジーアデノウイルス”を改変したウイルスが使われています。この改変チンパンジーアデノウイルス (ChAdOx-1) に、新型コロナウイルスのスパイクタンパク質の設計図である遺伝情報を描き込んだDNAが乗せられています。
このように、ウイルスに特定の遺伝情報を運んでもらうようなワクチンを、ウイルス”ベクター”(”運び屋”という意味)ワクチンと呼びます。
本来、ウイルスはヒトの細胞に感染し、細胞内で自分自身を複製して増殖しますが、アストラゼネカ社のワクチンに使われるアデノウイルスベクターは、細胞内で自己複製できないように加工されていますので、接種者の体内でウイルスベクターが増殖することはありません。
ベクターワクチンを筋肉内に注射すると、注射した部位の周りの細胞にウイルスベクターが「感染」し、細胞内で新型コロナウイルスのスパイクタンパク質が作られます。そのスパイクタンパク質を免疫細胞が認識して、スパイクタンパク質に対する抗体や免疫細胞がつくられます。
mRNAワクチンと比べると、アストラゼネカ社のベクターワクチンはウイルスを使ってヒトの細胞にコロナウイルスのスパイクタンパク質の設計図を届けるという点が異なります。しかし、設計図を元に細胞にスパイクタンパク質を作らせることで免疫を誘導する、という仕組みはmRNAワクチンと似ています。