2-1 どうしてワクチンがたった1年間でできたのか教えて下さい

2021/02/23

 これまで数年~十数年以上かかっていたワクチンの開発が、今回は1年以内で行われたことに不安を覚える方も多くいると思いますが、今回のワクチンが開発から承認がこれほど速く進んだ理由はいくつもあります1-3)

理由1)2002-2003年に流行した重症急性呼吸器症候群(SARS)や2012年頃から地域的に流行する中東呼吸器症候群(MERS)の原因であるコロナウイルスのスパイクタンパク質は、今回の新型コロナウイルスにとてもよく似ています。このウイルスに関する研究が続けられていたため、今回のウイルスでも、どこをワクチンの標的にすれば良いのかすぐに判明しました。

理由2)遺伝子を調べる技術革新や、mRNAワクチンに関する長年の研究により、遺伝子配列がわかればすぐにワクチンを設計できる技術がありました。

理由3)いくつかの段階の動物実験や臨床試験を同時並行で行い、効率よく研究を進めることができたこと。

理由4)世界中で大きな流行(パンデミック)になったことにより大規模な臨床試験の対象となる人がたくさん確保できたこと。

理由5)米国政府などから、ワクチン開発のために大量の資金が投入されたこと。

理由6)最終的な臨床試験を終える前から可能な箇所の審査を始め、結果が出次第承認の可否を判定できるように準備をしていました。

 このように、様々な工夫がされていたことが、短期間で開発がされた理由です。

 これだけ早く承認されたので、安全性の評価が甘いのではないかと思われる方もいるかもしれません。しかし、mRNAワクチンの効果と安全性を評価する大規模な臨床試験(ファイザー・ビオンテック社は43,448人、モデルナ社は30,420人)は、従来のワクチンと比べても、規模が大きいものでした4,5)また、FDAの承認審査はYouTubeで生配信されるなど、有効性や安全性の検証は透明性の高い方法で行われました。世界では既に何十億回の接種がされており、現在も有効性および安全性の観察が続いています。

 

  1. Nature. 2021;589:16-18
  2. N Engl J Med. 2020;382:1969-73
  3. Moderna. Moderna Announces Progress in Prophylactic Vaccines Modality with CMV Vaccine Phase 2 Study Data Now Expected in Third Quarter 2020 and Expands Investment in This Core Modality with Three New Development Candidates
  4. N Engl J Med. 2020;383:2603-15
  5. N Engl J Med. 2021;384:403-16

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