どうしてワクチンがたった一年間でできたのか教えて下さい
2021/02/16
ファイザー・ビオンテック社及びモデルナ社のワクチンの緊急使用許可(EUA)が、開発から1年以内で行われたという開発の早さに不安を覚える方もいると思います。
今回のワクチンの開発から承認がこれほど早く進んだ理由はいくつかあります1-3)。
・2002-2003年に流行した重症急性呼吸器症候群(SARS)や中東呼吸器症候群(MERS)とその原因であるコロナウイルスのスパイクタンパク質(今回の新型コロナウイルスに類似)に関する研究の蓄積があったこと
・遺伝解析技術の向上や、mRNAワクチンに関する長年の研究の蓄積により、遺伝子配列が公開されればすぐにワクチンをデザインできる技術が開発されていたこと
・いくつかの段階の動物実験や臨床試験を同時並行で行ったこと
・ 感染流行により大規模な臨床試験の進みが早かったこと
・米国政府や国際機関・基金などによる大量の資金の投入
・最終的な臨床試験を終える前から承認審査を始め、結果がわかればすぐに承認する準備ができていたこと
など、様々な要因が挙げられています。
一方で、開発されたmRNAワクチンはいずれも、米国の審査で評価された臨床試験(ファイザー・ビオンテック社は43,448人、モデルナ社は30,420人)は申し分ない規模のものです4,5)。また、FDAの承認審査はYouTubeで生配信されるなど、有効性や安全性については従来のワクチンよりも透明性の高い方法で検証されています。
- Nature. 2021;589:16-18
- N Engl J Med. 2020;382:1969-73
- Moderna. Moderna Announces Progress in Prophylactic Vaccines Modality with CMV Vaccine Phase 2 Study Data Now Expected in Third Quarter 2020 and Expands Investment in This Core Modality with Three New Development Candidates
- N Engl J Med. 2020;383:2603-15
- N Engl J Med. 2021;384:403-16