4-10 新型コロナウイルスワクチンで心筋炎が起こるのでしょうか?
2021/02/16
mRNAワクチン接種後の稀な副反応として、心筋炎という心臓の筋肉の炎症が起こることがあります1)。イスラエルの大規模な臨床研究では、10万人あたり2.13件で心筋炎が認められ、16〜29歳の男性では10万人あたり10.69件で最も頻度が高かったことが報告されています2)。日本のデータでも、1回目接種後よりも2回目接種後に多く、特に若い男性で心筋炎が疑われる事例の頻度が高いと報告されています2)。また、ファイザー・ビオンテック社製よりもモデルナ社製のワクチンの方が報告頻度が高いことが分かっています。例えば、日本の12-14 歳の男性において心筋炎が疑われた報告の頻度は、ファイザー・ビオンテック社製ワクチン(100万接種当たり26.1件)よりモデルナ社製ワクチン(100万接種当たり80件)の方が多い結果でした。また、15-19歳の男性では、100万接種当たりそれぞれ25.5件(ファイザー・ビオンテック社製)と98.7件(モデルナ社製)となっています。
厚生労働省は「いずれのワクチンも、新型コロナウイルス感染症により心筋炎や心膜炎を合併する確率は、ワクチン接種後に心筋炎や心膜炎を発症する確率と比較して高いこと等も踏まえ、現時点においては、接種によるベネフィットがリスクを上回って」いるとしています。ただし、上記の通り、ファイザー社のワクチンに比べ、モデルナ社のワクチン接種後の心筋炎・心膜炎が疑われる報告頻度が高いことから、10代及び20代の男性についてはファイザー社のワクチンも選択できることとする、としています3)。
新型コロナワクチンを接種した後の心筋炎は、多くが数日から1週間程度の入院治療が必要になります。しかし、全体の76%が軽症、22%が中等症と分類されており、ほとんどの症例で症状は回復することが知られています2)。特に若い男性においてコロナワクチン接種後、数日以内に胸の痛み・息苦しさ・動悸などが生じた場合は心筋炎の可能性も考え、医師にすぐ相談しましょう。
- CDC. Myocarditis and Pericarditis Following mRNA COVID-19 Vaccination
- N Engl J Med. 2021;385:2132-2139.
- 厚生労働省. 新型コロナワクチンQ&A